Domaine Paul Pernot et Ses Fils

陽も落ちかけた頃に訪問。出迎えてくれたのは1週間前にひいおじいさんになったというPaul Pernot氏と、その息子Paul Pernot Jr.、弟のMichel Pernot氏。偶然、時間があいたからなのか、3人が出迎えてくれ、早速試飲を始めることになった。

1.Bourgogne Aligote 2009
1300本生産。8年前から貸していた畑が2009年に帰ってきたそうで、その畑から産する。これまでドメーヌとしてAligoteをリリースするのはなかったそうで、初めての出荷になった。地元消費が多く、残念ながら、日本未入荷。翌2010年は花が咲かないまま落ちてしまったので、生産されない事となった。シャルドネよりもアリゴテはデリケートなのだそうだ。シャサーニュ村側のルフレーヴの家の近くの区画で、ヴィエイユ・ヴィーニュだが、詳しい樹齢は不明。バナナやトロピカルフルーツ、ハニーの甘い香りにフレッシュな酸が加わった、きれいな風味。



2.Bourgogne Chardonnay 2009
所有面積2ha。酸もあるが、熟度とミネラル感がとてもしっかりとしている。新樽は使用せず、旧樽のみで造られるため、純粋にその年の葡萄を感じることが出来る。ピュリニー村でも一番おいしいブルゴーニュブランができるとされる、シャンペリエという、石が多い畑から産する。どんな年でも安定した品質を持っている為、ドメーヌからリリースされてもすぐに完売してしまう人気は今でも健在。



3.Puligny Montrachet 2009
樹齢約45年。新樽比率30%。華やかで熟した甘い香りの印象のままに、濃密でミネラルと果実味のしっかりとした造りが際立つ。美しく清らかな酸とミネラルはとてもバランスが良い。

2009年は豊作だったが、2010年はそれに比べるとかなり生産量が減ってしまったそうだ。特に赤は大きく減ってしまった。春以降寒かったので、花が予定よりも咲かず、なった実は小さかったが、とても凝縮したものだったそうだ。「収量は減ったが、クオリティはかなり高いと思うよ」とPaul Pernot氏は自信を持って言う。「畑での地道な作業を怠らなければ、葡萄はそれに必ず応えてくれるんだよね」と、笑う。



4.Meursault Blagny 1er Cru La Pièce Sous Le Bois 2009
植え替えした畑で、ファーストヴィンテージとなった2007年までは生産されなかった。ミネラル感に富み、柔らかで厚みのある飲み口。凝縮度と粘性が高く、酸度も程よい。



5.Puligny Montrachet 1er Cru Clos de La Garenne 2009
樹齢50年。とても熟度が高く、甘く凝縮している。酸もしっかりとあるが、果実味の方が優っている。花と桃、ナッツ、バター、ヴァニラなどの香りがとても品良く混ざり合っている。

バランスの取れた秀作。とても狭いので馬を使うことが出来ず、働きづらい場所のこの畑は、大戦時の徴兵で男手がなくなってしまい、手入れが出来ず荒廃してしまっていた時期もあったそうだ。Meursaultなどは平地なので女性が手入れできたが、ここはとても難しい畑だったそうだ。Paul Pernotの祖父の時代には葡萄が出来づらく5年に1回ほどしか出来なかったが、今や毎年煌くワインを世に送ってくれる素晴らしい畑のひとつとなった。そこには彼らの血の滲むような努力があったに違いない。

以前から問い合わせを受けているクロ・ド・ラ・ガレンヌのモノポールに関して、他のドメーヌではモノポール(単独所有畑)とラベルに表記しているが、これはどういうことなのか聞いてみた。Paul Pernot氏は、あのとても大きなメゾンの事だよねと笑いながら答えてくれた。確かに同じ畑だから正確にはモノポールではないが、これには事情がある。

1980年頃、Ch.ド・ピュリニーのオーナーだった男が、所有するこのクロ・ド・ラ・ガレンヌをかの有名なメゾンに買わないかと持ちかけたそうだ。ここまではどこでも聞く類の話だが、オーナーはこれをモノポールだと偽って彼等へ売却したそうだ。当然、彼らはそれをモノポールと信じて購入した。まさか騙されるなんて夢にも思わなかったのだろう。後になって実はポール・ペルノも以前からこの畑を所有していたと知り、騙されてしまった事に気付いたが、それは既に手遅れだったのだ。ちなみにこの畑、確認できる範囲では、Paul Pernot氏の曽祖父の時代には既に所有していたそうだ。

売り払ったオーナーはその問題が解決しないままこの世を去り、うやむやになってしまった。騙されてしまった彼らはモノポールだと信じて買ったので、ラベルにはモノポールと今でも表記し続けている。彼らも可哀そうな被害者なのだ。
もちろん、購入の際、当然畑の視察にも行ったはずだが、地図を見ても分かるようにクロ・ド・ラ・ガレンヌは二つに分かれている。その間は森に囲まれて死角ができ、奥にある畑の存在には気が付かない位置に畑はあるのだ。Paul Pernotは、あえてその問題には割って入るようなことはしなかった。当然ながら彼らのクロ・ド・ラ・ガレンヌには今でもモノポールの表記はない。

6.Puligny Montrachet 1er Cru Folatiere 2009
所有面積3.1ha。樹齢約50年。クリーンでピュア、クリーミーでエレガント。この年の恩恵をしっかりと受けた特別なキュヴェ。
フルーツの甘みとミネラル感を舌でしっかりと感じることが出来る。酸も伸びがあり、とてもバランスよく仕上がっている。美しい余韻もとても長く持続する。



7.Puligny Montrachet 1er Cru Pucelles 2009
所有面積0.4ha。樹齢約40年。暖かみのある豊かな果実味。とても凝縮感があり、リッチなスタイル。ピュセルやバタールは急な斜面ではないので葡萄は昔から安定的にできたそうだ。アルコールは13.3〜14℃あり、ボリューム感もしっかりとある。酸度は2008年より低め。全体的にいえる事だが、2009年は、とてもやわらかく、熟度が高いおかげで、早くから飲むことが出来る。対して、2008年はがっしりとパワフルなスタイルで、長熟型のワインが造られた。どちらも年の個性を忠実に表現している。



8.Beinvenues Bâtard Montrachet 2009
所有面積0.37ha。シトラス、ミント、プロヴァンスハーブ、バター、ヴァニラ、白桃、柑橘系、白い花などの豊かで品のある香りが、複雑に混ざり合っている。うっとりするほどの透明感にあふれた美しい液体。粘性のある熟度の高い果実味と、ミネラル感は他を圧倒するほどの強い存在感を示している。フィネスとエレガンスの極みを早いうちから楽しむことが出来る。



9.Bâtard Montrachet 2009
所有面積0.6ha。新樽比率40%。所有する3つの区画が全てMontrachetに隣接する恵まれた区画から産する。蜂蜜、ヴァニラ、ナッツ、ミネラル、ミント、ユーカリ、ハーブ、レモン、オレンジ、花、オークなどの豊かな芳香。リッチで厚みがあり、ミネラル感に溢れ、魅惑的な果実味は多くのファンを改めて惹きつけてくれるだろう。
2009年は1999年に似ているが、もっと高いレベルにあるとPaul Pernot氏は感じているようだ。偉大な1973年にも似ているとも分析している。

今でも圧倒的な存在感のあるオーラを放つポール・ペルノ氏。高齢だが、まだまだ元気で楽しみの一つであるバイクに毎日のように乗っているそうだ。これまで無事故なんだよと少年のような笑顔が印象的だった。