Domaine de L’arlot

*ドメーヌ・ド・ラルロ
2014年10月23日訪問。
出迎えてくれたのは、醸造責任者であるジャック・ドゥヴォージュ氏。彼はその類まれなる才能を見込まれ、あのクロ・ド・タールの責任者としてヘッドハントされた。ラルロでの仕事に満足していた彼だが、誰もが与えられる機会ではないと、新たな道へ進む決断をし、次のステージへと進むことを選んだ。

これは約20年間にわたってクロ・ド・タールの品質を向上させた支配人で技術責任者のシルヴァン・ピティオ氏の2014年末の引退に伴うものだ。クロ・ド・タールは今後、大きく変わることだろう。

ただ義理堅い彼は引き継ぎの為に2014年12月末までラルロに残り、新しい担当者と共に働く事にした。これはとても稀な事で、彼の実直な人間性がうかがわれる。

出迎えてくれたジャック・ドゥヴォージュの隣には小柄な金髪の女性がいた。彼の後を引き継ぐこととなった、ジェラルディーヌ・ゴド氏(Géraldine Godot)だ。

ラルロに来る前はブルゴーニュのネゴシアン アレックス・ガンバルで醸造責任者として辣腕を振るっていた。今日のアレックス・ガンバルの成功があるのは彼女の功績によるものがとても大きかったとされている。

実際、ジャックの後任を探している際、ラルロの親会社であるアクサ・ミレジムのワイン部門 最高責任者クリスティアン・シーリーなどの幹部、そしてジャック達、全員の同意を得た唯一の人物だったそうだ。

それ程、他の候補者を圧倒するほどの才能の持ち主だったのだ。彼女はディジョン大のJules Guyotで細胞生物学とエノロジストの修士号を取得している才媛でもある。しっかりとした知識と類まれなる感性、そしてアレックス・ガンバル以外にも世界中のワイナリーで経験を積んだ彼女はまさに新生ラルロを任せ、より高いレベルへ導くことが出来る唯一の人物だったのだ。

早速、セラーで2013年産を試飲する事となった。


ジェラルディーヌ・ゴドとジャック

2013年の冬はとても寒く、太陽光が少なかったそうだ。1月は17時間ほどの日照しかなったそうだ。春になっても引き続き寒く、また雨も多かったので、花がなかなか咲かなかったそうだ。5,6月も温度は低く、雨も降っている事が多かったそうだ。地面が絶えず濡れていたので、トラックなどが通れないという事態がブルゴーニュのあちこちであったそうだ。ラルロでは全ての畑でビオディナミのトリートメントを行っているが雨により数日でそれらが流されるので、その度に根気強くやり直す必要があったそうだ。生産者が如何に自然と向き合い、その試練を地道にクリアしていく事ができるか、天に試されているかのような年がこの年も続いていたようだ。


6月終わりにようやく花が咲いたが、樹齢の古い樹木は花ぶるい (Coulure)が多く発生したそうだ。これもブルゴーニュ全体で起こった事だった。この影響があり、例年なら200樽ほど生産できるのが、2013年は-30%となってしまった。6月までの天候からは想像できない程、7,8,9月が最高の天候が続いたそうだ。

7月はこれまでの日照不足を一気に取り戻すかのような程、連日暑すぎるぐらいの好天が続いた。ただ、これほどまでに急激に暑くなると雹が発生しやすくなる懸念が常にあったそうだ。幸いなことにラルロの畑では雹害はなかったそうだ。

9月末になると、陽も弱くなり、少しだがボトリチス、いわゆる灰色カビが出てきたそうだ。これ以上、待っても糖度は上がらない上、雨などのリスクも常にあるので、10月2日に収穫を開始した。


遅く収穫したことで、上質なスタイルが良く出てきたそうだ。最後の3ヵ月の好天のおかげで適度な熟度と酸が備わった秀逸なブドウが採れたとジャックは話してくれた。
潜在的なアルコールは12.5%あり、50〜60%は全房のまま仕込まれた。




1.CÔTE DE NUITS VILLAGES“CLOS DU CHAPEAU” 2013
所有面積: 1.55ha, 樹齢: 平均25年,
収量: 20hl/ha, 新樽比: 15%,
樽熟14〜16ヵ月, 2013年生産数: 3,900本
例年、8000本程度生産されているが、花ぶるいの影響もあり大きく生産量が減ってしまった。13樽生産。

クロ・デュ・シャポーの収量は2012年17hl/ha, 2013年20hl/haだった。久しぶりの豊作だった2014年でも30hl/haとグランクリュ並みに低い収量だが、ジャックは高い品質を維持すると自然にこうなるそうだ。

味わいの中に異なる性格が感じられるのがこのキュヴェの特徴でもる。畑自体は丘の下の平坦な低地にあり、コンブラシアンの石灰が地殻変動によって、移動し、長い年月をかけて押し固められたような地層で、石灰のがれきがあり、ミネラル感が備わったものとなっている。デリケートで、とても繊細さがあるのが特長。

2013年のこのワインは熟度が高く、洗練された酸も備わっていて、実にラルロらしい。くっきりとした輪郭、中核にしっかりと芯があり、それは円く、しなやか。クロ・デュ・シャポーらしいペッパーとヴァニラの風味にココア、クローブ、白檀、チェリー、ミネラル、土、ブラックベリーが感じられる。ラルロらしい繊細さ、フィネスとエレガントさがあり、余韻に黒蜜のような香ばしく甘いニュアンスが感じられる。シャポーの畑は細かく砕かれた石灰質土壌でピノの良さがとても素直に現れるそうだ。


2. NUITS SAINT GEORGES "LE PETIT ARLOT” 2013
モノポールであるクロ・デ・ラルロの区画の若木部分の約0.62haから生まれる。区画はClos de L’arlot Rougeの区画とは隣接しておらず、Clos de L’arlot Blancの区画に隣接している。Le Petit ArlotとClos de L’arlot Rougeに挟まれる形でClos de L’arlot Blancの区画がある。
植樹されたのは1998年から2000年。通常なら3500本程度生産されるが、2013年は2700本程度の生産となった。口に含むと、心地よく熟した果実香が広がる。プラム、ブラックラズベリーなどの熟した果実香の他にあんず、シロップを含んだ果実、タバコ葉、スパイス、スミレ、牡丹、ミネラルなどの要素が感じられる。小気味いいスパイシーなニュアンスがいいアクセントとなっているが、全体的にはナチュラルでエレガントさが光るワイン。


3. VOSNE ROMANÉE VILLAGES 2013
2003年にSuchotsの畑に植樹された0.15haの区画から生まれるヴォーヌ・ロマネ・ヴィラージュ。ただ、2014年からはスーショに加えられるため、記念すべき最後のヴォーヌ・ロマネとなる。僅か2樽 約600本だけ生産された稀少なキュヴェ。ミディアムボディでキメ細かく上質でシルキーな質感、純度の高いエキス分、そしてスーショを感じさせる豊かなヴォリューム感を備えている。


4. NUITS SAINT GEORGES “LES PETIT PLETS” 2013
所有面積: 1.5ha, 植樹: 1987〜1989年
新樽比: 50%, 樽熟16〜18ヵ月
上位キュヴェのあたるクロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュに通じる濃さと力強さを感じます。口に含むとシルキーでとても滑らか、豊かなきめ細かい質感。タンニンは程よく溶け込んでおり、エネルギッシュで、オープンで、優しさがあります。N.S.G 1er Cru les Petits Pletsは塀内の下部分にあたるClos des Forêts Saint Georgesから造られている。樹齢は若くなく、平均23年。このワインの歴史は非常に厳しい寒さだった1986年の冬に始まった。気温はマイナス20度にも下がり、冷気が、丘の麓に溜まり、そのせいで、何本ものブドウの木が凍死した事があったそうだ。

その後、1987,1988,1989年と引き続いて、Forêts Saint Georgesの下部分の2/3の死んだ木を植え替えられた。今日これらのブドウの樹から、 Nuits Saint Georges 1er Cruを造り« Les Petits Plets »と名づけリリースされているのがこのワインだ。
このワインはまず“気品”を感じさせ“比較的若い”葡萄の木の部分から30-60年の古木からのキュヴェ、Clos de Forêts Saint Georgesよりも親しみやすさを感じさせる。

2013年は深みと輝きのある濃いルビー色。カシス、プラム、スミレ、ダークチェリー、ラズベリーモカコーヒー、花束などの深い香りが感じられる。石の多い区画だけにミネラルの要素がより強く感じられる。
新樽比は50%。


5. NUITS SAINT GEORGES 1ER CRU CLOS DE L’ARLOT 2013
Clos de l’Arlotの区画のNuits St Georges側は、パーセルの真ん中当たりに位置する。30〜50%の傾斜度のある丘のおかげで、太陽がよく当たる暑いミクロクリマとなっている。この傾斜は、昔からの地殻断層によるもので、現在、真東に面した、円形闘技場のような形になっている。
その為、日の出の最初の光が、その丘を照らし、土地や大気を暖める。またこの部分は風が当たらないので、一日中この温かさが続くそうだ。
もう一つのミクロクリマ(Beaune側)は丘の作用もなく、風が当たるので、もう少し涼しくなる。これらの異なるミクロクリマと異なる土壌質が、彼らにとって本当にラッキーなことで、一つのパーセルでありながら、その複雑さのお陰で赤ワインと白ワインを生産することができるのだ。

Clos de l'Arlot Rouge はドメーヌの中で最も古い葡萄木から造られる。その樹齢は平均70歳。土壌はとても深く、小石と土が混ざっており、Nuits St Georgesでは珍しい基盤岩(Ostrea Acuminata)の上に位置している。この基盤となる岩石は指で砕けるほど柔らかく、牡蠣の殻の化石も見られる。この地質は極めて珍しく、フィネスがあり、優雅でエレガントなClos de l’Arlotのワインのスタイルに貢献していることは間違いない。とてもフェミニンなワインといえる。


今この畑は転換期にある。ルージュの畑は全体で1.3haあり、その内、生産性の低い樹を引き抜き、一部休ませている状態にあるからだ。2010年に0.3ha、2012年にまた0.3ha引き抜かれた。これは区画の両端に当たる部分。樹齢が古いのでいい葡萄が採れることは採れるそうだが、あまりに生産性が低い為、畑の活性化の為に決断したそうだ。

植樹されたのはドメーヌ所有の中でも最も古い1939〜1951年。古い樹を抜くのはとても勇気がいるが長期的に見て、それが最善であると判断しているのだ。古木を徐々に植え替えていかないと、いつかは行き詰るのは目に見えているので、段階的に新しい血を入れ替える事が重要なのだと言う。
古い樹になると、だんだんとエネルギーがなくなり、花が咲く時期に寒さが続くなどするとさらに弱くなり、十分な品質を保つのが難しくなるそうだ。


2012年は5樽(約1,500本)、2013年は5.5樽(約1,650本)、2014年は9樽(約2,700本)生産された。2014年が増えたのはクロ・ド・ラルロの若木から生まれるプティ・タルロの樹齢と品質が基準を満たしたものをクロ・デ・ラルロに加えたためだ。

2013年のワインはレッドチェリー、ストロベリー、花束、プラム、カシス、牡丹、ラズベリーモカ、ヴァニラ、チョコラ、土、タバコなどの豊かな香り。ミネラル感豊富で、純度の高い果実味とスパイシーさ、フィネスがとても調和している。赤く熟した核があり、とても洗練されている。余韻は品があり、とても長い。しっかり熟成させてから楽しみたい。



急斜面のクロ・デ・ラルロ
但し、古木は写真下部の平地に多い。


6. NUITS SAINT GEORGES 1ER CRU CLOS DES FORETS ST.GEORGES 2013

Clos des Forêts Saint Georges はCôtes du Nuitsの丘の斜面の大変恵まれた場所に位置する。Nuits Saint Georgesの南側に位置し、近い未来に特級になると思われるSaint Georgesに隣接している。モノポールであるこのワインの特徴は、 垂直方向に畑が広がっている事です。というのも、このパーセルは、ニュイの高い丘から、下の国道に沿って、また森に続く斜面部分にも続いている。イメージをしてもらうとすれば、ニュイの斜面の地質は、一段一段異なる質の基盤岩からできている階段を想像してもらえばよいと思います。Clos des Forêts Saint Georgesは、この階段の全ての段にかかっている。この特徴は、ワイングラスの中でも、想像通り、これらすべての異なるニュアンスやニュイの丘のすべての地質の違いから来る複雑みを、このワインから感じとることができる。

Clos des Forêts Saint Georgesはle Clos de l’Arlotよりも色彩がしっかりとしており、スパイスと黒い果実の風味を力強く放つ。
口の中では、いつも力強さやエネルギーを感じる。このワインは様々なパーセルの様々な異なる地質による複雑さを備え、Clos de l’Arlotに比べると“男性的”と表現される。地理的に畑は近いが、味わいは異なるのだ。


クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュの畑

5.7haあり、2013年の収量は17hl/ha。通常なら35hl/ha採れるので、ここも大きく収量が減ってしまった。52樽(約15,600本)

この畑は、クロ・ド・ラルロ同様に斜面も含む、その為、斜面の上段、中段、下段のそれぞれでは同じ畑でも全く性格の異なるワインができるそうだ。畑は幅300m、高低差は35mもある。

ドメーヌではこの3つをさらに分割して、全6種類のキュヴェを造り、最終的にそれらをブレンドさせるのだ。

それぞれのキュヴェを実際にテイスティングさせてもらった。

クロ・フォレ斜面下部の区画
上から土や石が流れてくる影響もあり、土の厚みに比例するかのようにワインにも厚みがある。実際、土は深く、粘土も多いので、リッチでフィネスのある印象のキュヴェとなる。タンニンもきめ細かく、角がなく飲みやすい。

クロ・フォレ斜面上段の区画
上段は30cm程しか土がない。木石が混じった土壌で、その下には大きな岩盤がある。色合いはクロ・フォレの中でも一番濃い。エネルギーに満ちたワインができるようだ。断層がずれているので、土が深い所と浅い所がありとてもユニークな所だそうだ。2m掘っても岩盤が出ない所もあれば、20cm程で、岩盤に当たるなど、多様な表情がある。

クロ・フォレ斜面中段の区画
この区画が1953、1956年に植樹された一番古い区画。クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュの核となるとても重要な区画だそうだ。他のキュヴェに比べ、一番甘みと深みが感じられる。円みがあり、豊満な印象。実際、これだけでリリースしても十分に高い評価を受けるだろう。


フォレの区画は高度差が35mもある。それぞれ異なるブドウが出来るのが最大の特長。丘の上部はエネルギー、中部は円みや豊満さ、下部はフィネスを与えるそうだ。同一畑で同生産者がこういった、特殊なテロワールを持つブドウを手に入れる事はとても稀で、ここにモノポールの強みがある。もちろん、モノポールだからといってこれほどのテロワールが異なる区画は極めて稀なケースと言える。ラルロならではと言えるだろう。この強みを最大限生かすために、彼らはそれぞれの高低差のある区画を分けて収穫し、もちろん、それらを分けて醸造するのだ。それぞれの区画からの葡萄だけでも質の高いワインが出来るが、最終的にそれらをブレンドし、ひとつのキュヴェとしてリリースする。そうすることで、単一区画だけでは表現できなかった味わいの奥深さや複雑性、テロワールの偉大さを表現できるのだ。


NUITS SAINT GEORGES 1ER CRU CLOS DES FORETS ST.GEORGES 2013
最終的に前出の3キュヴェ(実際は6キュヴェ)をブレンドしたものをリリースすることになる。今回は前出の3種をグラスの中で、スポイトでブレンドしたものを試飲した。ほぼ完成形と言える。



それぞれのキュヴェでも十分に美味しいと感じていたが、このブレンドしたものは全くの異次元のものだった。香りの要素がどんどん花開いて、グラスから溢れだすかのよう。異なるミクロクリマから生まれるキュヴェをブレンドすることで、コーラスのように色々なキャラクターが共鳴し合うかのようだ。ブラインドでもその違いは明らかな程、はっきりと異なる。
ブレンドする事で、柔らかさとフィネス、そして肉のような要素が出てきて、これが男性的に感じる一つの要素なのかもしれない。畑は高低差があり、幅も長いので、それぞれを別の畑のように、分けて造る。それのバランスを見ながらブレンドするのはとても興味深い。ジャックもとても面白い作業だと話していた。

ブラックベリーラズベリー、スミレ、甘草、花束、牡丹、土、ミネラル、スパイス、ヴァニラ、モカ、ショコラ、煙、赤身肉などの複雑な香りが感じられる。品質はグランクリュ、しかもトップドメーヌの一部でしか感じられない気品や風格が備わっている。近年のブルゴーニュの高騰を考えると、ラルロのワインはかなりお買い得で、抜群のコストパフォーマンスだと言える。


7. VOSNE ROMANÉE 1ER CRU LES SUCHOTS 2013
0.7haあり、これに同畑内の若木の部分が0.15haあるので、トータルで0.85ha所有している。若木からはVOSNE ROMANEE VILLAGESがリリースされているが、2014年からはSUCHOTSに加えられるので、生産量としては若干増える予定だ。
2013年は11樽(約3,300本)生産された。
畑はリシュブールに通りを挟んで隣接する好立地。Suchotsの中でも極めて高い品質のブドウが採れることで知られる。

優雅さ、気品、華麗さがあり、しっかりと焦点の定まった秀作。しなやかなタンニン、緻密できめ細かく、うっとりするようなエレガントな質感がある。しっかりとしたバックボーンと均整の取れた無駄のない体躯。赤系、黒系それぞれの果実のたっぷりとした熟度に清涼感のあるメントールのようなクールさのある果実香が感じられる。アニス、甘草、グローヴ、上質な紅茶、煙、スミレなどの花束、コーヒー、カカオ、ミネラル、黒蜜、バラなどの要素が感じられる。

8. ROMANÉE SAINT VIVANT 2013
0.25haの畑から、2013年は3.5樽分(約1,050本)生産されたが、日本に入荷するのは、ほんの僅かのとても稀少なワイン。228リットルを2つと、特注の350リットル1つで仕込まれた。これまで228リットルを使い3樽半で仕込んでいたが、そうすると最後の樽に空間ができて空気との接触が出来てしまっていた為、新たに350リットル樽を加えている。
所有する区画は通りを挟んで、ロマネ・コンティと隣接する好立地。

スミレ、カシス、バラの花びら、スパイス、甘草、牡丹、ミネラル、プラム、メントール、ヴァニラなどが感じられる。
どのキュヴェよりもタンニン、果実味が強く感じる。スケール感のある全く異次元の世界観を見せてくれ、余韻が長く永遠に続くかのよう。

ドメーヌの新たな試みとしては、500リットルのオーク樽を導入していることが挙げられる。通常はどこのドメーヌでも228リットルの樽を使用しているが、これだと新樽の場合、樽香が付きすぎてしまう傾向があると考えている。それより倍の大きさの樽を使う事で、ワインが樽に触れる表面積を減らし、樽香を余分に付けすぎないようにコントロールできるそうだ。発酵と熟成をオーク樽で行うが、大きい樽を使用する事で、発酵はより緩やかで、ゆっくりと行われ、そのおかげで、ワインはフレッシュでアロマティックになるそうだ。ただ急にすべてを切り替えるのは影響があるので、徐々に切り替えていく予定で約7年後には全ての樽が500リットルに切り替わる。

9. CÔTE DE NUITS VILLAGES AU LEUREY 2013
ドメーヌ前の道路を挟んで向かい側に位置する0.23ha所有の畑。通常であれば、5樽(約1500本)ほど生産できるが、2013年は3樽に減量した。元々はピノノワールが植えられていた区画だが、北向きの畑で、酸が強くなることから、シャルドネ向きであると判断し、植え替えられた。スメとルリッシュが共に手がけていた2006年に植え替えられた。若木ではあるが、エレガントでとても繊細なワインが生まれる。ナッツやパッションフルーツ、トロピカルフルーツ、爽やかなシトラス系フルーツ、白い花のようなアロマが感じられる。とてもバランスが良くブリオッシュの要素も感じられる。熟成によってもっと面白い表情を見せてくれるとジャックは話してくれた。

10.NUITS SAINT GEORGES BLANC LA GERBOTTE 2013
La Gerbotteは1998〜2000年に植えられた0.8haから生まれる。クロ・ド・ラルロの区画にあるが、クロ・ド・ラルロブランの区画とは接していない。このワインは96%のシャルドネと4%のピノ・ブーロから造られている。区画の最南で区画中で最も涼しい部分に位置し、土はわずかで、とても固い石灰質の舗石から成る土壌。若木からは、少しトロピカルなニュアンスのある開いたアロマを醸し出し、また石灰質の石からはしっかりしたストラクチャーとミネラル感を口の中で感じさせてくれる。
2013年の収量は25hl/ha。11樽(約3,300本)生産された。白い花やナッツ、トロピカルフルーツのアロマが印象的で、ミネラリーで粘性が高く、グレードの高さがはっきりと感じられる。

10.NUITS SAINT GEORGES BLANC 1ER CRU CLOS DES L’ARLOT 2013
2013年は6樽(約1,800本)生産された。ジェルボットよりもさらに粘性が高く、シトラス系フルーツのフレッシュな風味とエレガントな白い花の要素がとても印象的。ジャック曰く、2013年は熟成がとてもゆるやかで、そのおかげかラルロの恵まれたテロワールの正確なキャラクターが現れやすいそうだ。ピュアな要素がきれいに現れている。樽に入れた当初は閉じていたが、数カ月たつと繊細さが出てきて、それが爆発的に花開いてきたそうだ。ジャック曰く、2013年は赤白共に2010年に似ていると評している。樽に入れてからの熟成の仕方は、2010年にとても似ているそうだ。


Clos Arlot Blancの傾斜部分の耕作の様子

最後に仕込みしたばかりで、これからマロラクティック発酵が始まるワインを試飲した。2014年はとても果実の熟度が高く、スパイスやタバコ、赤身肉の要素が印象的だった。とてもピュアでジャック曰く、口に含むだけでココロもカラダもウキウキするようなワインが出来るだろうと話していた。

2014年はジャックとジェラルディーヌの二人が手掛ける最初で最後の特別な年のワインとなる。その年にこのようなグレートな年に出会えるのはワインの神様が祝福しているからに違いない。

ジェラルディーヌは、自分が関わっていないヴィンテージなので、決して前面に出る事はなく、常にジャックを立てていた。ジャックから意見を求められると、とても分かりやすく、説明してくれた。試飲中もとても的確なコメントを述べていた。二人の息もぴったりで、まるで長年働いていたかのような印象を受けた。ワイン造りに関して、とても高いレベルで意思の疎通がとれているようだった。ジェラルディーヌは聡明で思慮深く、エレガントさが感じられる素敵な女性だ。2015年産が記念すべき彼女の初ヴィンテージとなる。