[Domaine Paul Pernot & Ses Fils]

ドメーヌ・ポール・ペルノ・エ・セ・フィス

 9月1日(土)11:00訪問。出迎えてくれたのはポール・ペルノ氏とポール・ペルノJr.氏。いつもの試飲する場は、収穫を間近に控え、いつもよりもがらんとしていた。収穫に向けての臨戦態勢が整っており、収穫という大変な戦いの前のほんの一時の静寂に包まれていた。



ポール・ペルノ氏



1.Bourgogne Chardonnay 2011 
6月の終わりに瓶詰したキュヴェ。熟度も酸もしっかりある。ハニー、白い花、白桃、レモンなどの柑橘系のさわやかな芳香やミネラルなどの香りがバランスよく表現されている。ミネラリーでエレガントな上質な質感からは、これがACブルゴーニュであることを思わず忘れてしまう程の高い品質を備えている。ピュリニーと呼んでも遜色ないほどのいい出来。

2011年は2010年よりは収穫量が増えたが、2009年よりは少ないそうだ。ペルノ氏はまだ若いからはっきりと判断してしまうのは難しいが、とてもバランスが良く、酸もある為、長熟型のいい年になるだろうと今の所判断している。現時点では2007年に似ているがスケール感は2011年の方があるだろうとの事。

2011年は9月初めに収穫を開始したそうだ。もう少し遅くしたかったが、フィネスのバランスを見て収穫を始めた。遅らせる事によって酸度の低下や雨、カビのリスクを考慮していたが、その判断はとても良かったと評している。



2.Puligny Montrachet 2011
 ACブルゴーニュよりもさらに硬質なミネラル感に包まれている。香りはまだ閉じているが、フローラルな柔らかい香りとハニー等の甘みのある香りにライムの皮などのフレッシュな香りなどのほんの一端を感じる事ができる。果実の濃縮度も適度で、熟度もあるがミネラリーで酸もとてもしっかりしている。ペルノ氏の求めたフィネスをしっかりと感じる事が出来る。

2009年は熟度が高く、早くから飲める為にグレートヴィンテージと評す人がいるが、ブルゴーニュ本来のスタイルではないとペルノ氏は言う。果実の熟度は高すぎると焦点がぼやけ、きっちりとした酸がないと熟成しても中身の弱いワインになってしまうからだ。いい年に違いはないが、決してグレートではないのだ。
そういう意味で、2011年はきっちりと酸とミネラル感があり、熟度も備わっているこの年はポール・ペルノにとってグレートな年なのだ。



3.Meursault Blagny 1er Cru La Piece Sous Le Bois 2011 
2007年がファーストリリースのこのワインはピュリニー・モンラッシェを拠点とするポール・ペルノにとってかなりお値打ち度が高いワイン。品質は他のムルソー生産者を圧倒する品質ながら、価格は抑えてあるからだ。ムルソーらしく、肉厚でパワフル。とても柔らかな果実味を有しており、ミネラル感、酸、フィネスもしっかりとある。熟度と酸度のバランスがとてもいい。リッチなキュヴェに仕上がっており、是非熟成させてみたいと思わせる傑作ムルソー。生産量は少なく、入荷は他のキュヴェの半分程度。



4.Puligny Montrachet 1er Cru Champs Canet 2011
 昔から所有はしていたが、0.15haとそれほど大きくない為、ネゴス(J.ドルーアン)に販売していたそうだ。世界的な需要の多さに少しでも応えていこうと2011年からリリースする事となった。ただし入荷はどのキュヴェよりも少なく極僅か。インターナショナル・ワイン・セラーでは何故かChamps CanetではなくChamps Gainで紹介されているが、これはよくある間違い。ライムの皮やシトラス、ミントの新鮮で爽やかで溌剌とした香りとほのかに香る甘い芳香と鉱物香。ミネラリーでやや塩味があり余韻が長い。

5 Puligny Montrachet 1er Cru Clos de la Garenne 2011
 バター、フローラル、鉱物香、砂糖漬けのハーブ、ナッツ、ハニーライムの皮などの複雑な香り。液体はミネラリーでとてもピュア。酸度、果実味ともにしっかりで余韻も長い。ポテンシャルの高いキュヴェ。新樽の比率は50%。

ポール・ペルノは普段は白ワインをあえて飲まないようだ。普段は専ら赤ワインが多いそうだ。まぁこれまで通常の人の何倍も飲んで来たはずだから、それも頷ける。今では白ワインは知人が来たときに飲む程度らしい。もちろん白ワインのテイスティングはしっかりしている。彼らにとってワインとは食べ物の一種だった。ある意味、働くために飲んでいたそうだ。だからお酒にはめっぽう強いと豪語する。ただクリストフ・ブリチェックの祖父であるジョルジュ・ブリチェック程ではないだろうと話していた。真偽のほどは定かではないが、戦争時、ポーランド人は消毒用のアルコールまでも飲んでいると聞いた事があるそうだ。もしそれが本当なら、彼らにはとても敵わないよと語っていた。ともかく、それがただの噂であってもポーランドの人はお酒が強いイメージがあるようだ。

現在、76才ながら、ポール・ペルノ氏はとても元気だ。今も愛車であるハーレーに乗って、山の中を疾走するそうだ。旧道を通る為、利用者がなく独占して走れることが楽しくて仕方ないそうだ。きれいな景色を見ながらバイクを飛ばすことが何よりもストレス解消になっているという。息子のポール・ペルノJr.やその弟も父の影響を受けてか同じ趣味を持っているそうだ。ただそれぞれの時間を邪魔しないために一緒には行動しないのだという。ちなみにJr.はYAMAHA,彼の弟はHONDAが愛車なのだとか。日本製は信頼度が違うよと語っている顔は実に嬉しそうだった。いいワインを造る人たちはオフの過ごし方が充実しているように思える。その充実した気持ちは、やはりワインに少なからずとも影響を与えているのだろうと思わざるを得ない。




6 Puligny Montrachet 1er Cru Folatieres 2011
 バターや白桃、白い花、ハーブの砂糖漬け、トリュフ、鉱物、ミント、ナッツ、洋梨、パインやシトラス系のフレッシュでキレのある香り。密度が高く、十分な甘みと、酸を備えている。酸、果実味、ミネラル感共に調和のとれた見事な味わい。3.1ha所有しており、ポール・ペルノとしてはピュリニー1級の中で一番大きい。ClavoillonとPerrieresに接したすべての区画とそこから北西に向けて広い区画を所有している。同畑内でも微妙に異なる場所を有している為、年の出来に左右されることがない。ポール・ペルノのフォラティエールはどんな年でも外れないひとつの重要な理由でもある。




7. Puligny Montrachet 1er Cru Les Pucelles 2011 
明るい緑色を帯びたゴールデンイエロー。ナッツ、白い花、麝香、洋梨、レモン、ライム、白桃、ミント、スパイス、燻製、リンゴ、ヴァニラと鉱物、トーストのような香りがバランスよく出ているが、恐らくもっといろいろな要素が出てくるだろう。酸、濃縮度共に高いレベルにあり、じっくりと寝かせてみたいと思わせる1本。豪華さよりも、洗練された印象であり、女性的で純粋無垢な印象。




ポール・ペルノJr.氏



8.Beinvenues Bâtard Montrachet 2011
面積は0.37ha。樹齢は30年を超えた区画から産出される。2ヵ所に分かれた区画を所有し、一方はバタールとそのまま縦につながる細長い区画を所有している。エッヂに淡い緑色を帯び、粘性の高さを目からも感じる事が出来るゴールデンイエロー。ライムやレモンなどの柑橘の皮の爽やかで新鮮な香りと、ヴァニラ、ハニー白桃、パイン、洋梨アプリコット等の熟して甘い香りが印象的。それにオークのトースティな香りと白トリュフが品よく合わさり、ゴージャス感が自然と滲み出てしまうかのようだ。とても厚みがあり、リッチでゴージャスな香り立ち。ねっとりと濃縮度の高い果実はふくよかでとてもやわらか。ただ酸もしっかりとしていている。しっかりと熟成させてから飲むべき逸品。現時点でもエレガントでバランスの良さを感じる事が出来るが、やはり少し閉じた印象。



9. Bâtard Montrachet 2011
面積は0.6haで樹齢は30年以上の区画。ピュリニー側とシャサーニュ側両方に区画を所有している。やや緑がかった輝きのある明るいゴールデンイエロー。バター、ハニー、桃、アプリコット、ミント、ハーブの塩漬け、洋梨、フローラル、パイン、スパイス、麝香、鉱物、干し草、レモン、ナッツなどが複雑に絡み合った厚みのある香り。ビアンヴィニュよりもさらに濃密になった印象。かなり閉じているがスケール感の大きさはしっかりと感じる事が出来る。

2011年はエレガントで伸びのある酸、豊かで質の高いミネラル感と素晴らしいフィネスを備えた長熟型のいい年になったようだ。果実味のバランスが良く、将来がとても楽しみなワインが出来たと感じた。
しかしながら、ブルゴーニュ全体の漠然とした年のイメージで、もしかしたら、敬遠されてしまう年になってしまうかもしれないが、ポール・ペルノのワインを飲めば、それが如何に誤っていたかをはっきりと自覚する事ができるだろう。
先行きの見えないこんな世の中だけれども、いいものは、やはりいいんだとはっきりと感じ、それを発信していきたいと強く感じた。


Beaune市街

対して、ニュースでも報道されたように2012年はピュリニーにとって受難の年だった。雹や病害が例年以上に発生し、収量は例年の1/3程度にまで落ち込むだろうとペルノ氏は語っていた。当然、生産量も激減し、入荷も少なくなる。ただ残っている果実自体はとても凝縮した素晴らしいもので、量こそ少ないが、ワインにとっては、とてもいい年になるだろうと話していた。極端に収量が減ったとしても、不良果は例年以上に徹底して取り除き、安定して高い品質を世に送り続けてきた彼らには一切の迷いもない。その年の最善の選択をする事こそが、彼らのワインを待ち望んでいる世界中のファンに応える事だと彼らは確信しているからだ。


何度も言ったように、2012年のブルゴーニュは受難の年だった。村によっては何度も雷雨や雹に襲われ、カビなどの病害も発生したりもした。ただ真面目な生産者はそれらとそれこそ命がけで立ち向かい、そして乗り越えた。それを神は見ていたのか、8月の初めからはとても良い天気が戻り、ブルゴーニュの生産者の間には希望が広がっている。2012年は全般的に収穫量が少なくなるが、数が少なくなったぶどうは、ブルゴーニュで続いている好天候の恩恵を受けている。これがワインとなったらどんな表情を見せるのか楽しみでならない。





ブルゴーニュはこの日で終わり、翌日はシャンパーニュへ移動。その前にミシュラン三ツ星の名店ラ・メゾン・ラムロワーズでランチを頂きました。



MAISON LAMELOISE

お料理は、どのお皿も宝石箱みたいにキラキラ輝いていました。旬の食材をふんだんに使った味わい深いもので、細かい仕事が随所に見られ、口に運ぶたびに笑顔がこぼれる素晴らしいものばかり。スタッフの方々も気さくでとても居心地のいい空間でした。もっとかしこまっているのかなと思いましたが、違うんですね。料理を引き立てる心地よいサービスでした。

















“MAISON LAMELOISE”
36 place d'armes - F - 71150 Chagny en Bourgogne
TEL: +33 (0)3 85 876 565
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