Domaine de L'Arlot

Beauneから北上し、国道沿いに一際目を惹く、ライトブルーが印象的なドメーヌを訪問。
出迎えてくれたのは当主オリヴィエ・ルリッシュではなく、栽培・醸造責任者のPellegrinelli(ペレグリネッリ)氏。オリヴィエはスコット・ランドでのワインショウに参加するため、残念ながら都合が付かなかった。ちなみにペレグリネッリ氏が栽培・醸造責任者になったのは2005年からで、ラルロに来る前はCh.ド・ムルソーやローヌでワイン造りに携わっていた。ローヌのバロイというドメーヌにいたが、E.ギガルが買収して今はなくなってしまったそうだ。責任者とは言え、全て最終的な判断はオリヴィエ・ルリッシュが行う。彼らは指揮者とバンドマスターのような関係なのだろう。その彼と広報担当の女性を伴ってセラーで試飲することとなり、近年の作柄について、きれいに洗浄され管理の行き届いた醸造設備を前にして話してくれた。

2010年は2009年に比べると畑によっては30%近くも収量が落ちたそうだ。2009年末から翌年1、2月にかけて場所によっては-10℃にもなった。特にクロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュはその影響を受けてしまった区画があったと話してくれた。その後も春は涼しく、花が例年に比べて付かなかった。房も小さかったそうだ。これらが収量に大きく影響を与えてしまったようだ。ただカビは2007年や2008年よりも格段に少なく、選別をきちんと行いさえすれば2010年はとてもいいバランスを備えた素晴らしいワインになるだろうとも語っていた。2009年の平均収量は33hl/ha、2010年は25hl/haと大きく異なっている。

収穫を開始したのは9/26で、白のジェルボットから行われた。朝は白、午後に赤を摘んだそうで、赤はPetit Arlotから始めた。収穫時は寒くなっていたそうで、朝は1℃、午後になっても5、6℃と、かなり大変な環境での収穫だった。朝10時の休憩時には、みんなこぞって熱いお茶を求めていたそうだ。2009年は9/10から収穫を開始したが、気温は20度と全く違う環境での収穫だったと振り返る。

セラーへ移動し、2009年を樽から試飲した。

1.Vosne Romanée 2009 (樽)
スーショJ.Vとも言える、2003年に植え替えした区画のもの。やっと世に出せるレベルの葡萄ができるようになったというが、Suchotsとして出すのではなく、AC Vosne Romanéeとしてリリース予定。約600本のみ生産されるので、日本に入荷するかは未定だが、スーショほどの重さはなくても、チャーミングでフィネスもあり、タンニンの角も青みもなく飲みやすい味わいに仕上がっている。とても親しみ易いPetit Suchots。品質を考えれば価格はとても魅力的なものになるだろう。



2.Côtes de Nuits Villages Clos du Chapeau 2009 (樽)
約9000本生産。やわらかく果実味のしっかりとした味わい。タンニンの角もなくしなやかで濃密なエキス分がたっぷりとつまった印象。前述のVosne Romanéeよりもさらにオープンなスタイル。



3.Nuits St. Georges Petit Arlot 2009 (樽)
約5500本生産。クロ・デ・ラルロの若樹でその畑の上に位置する区画。タンニンがしっかりとしているが、クロ・デ・ラルロとはまたタイプの違ったタンニンだ。クロ・デ・ラルロのタンニンはヴォーヌ・ロマネのような力強いタンニンでプティ・ラルロはNSGらしい大らかなタンニンが特徴的だ。



4.Nuits St. Georges Clos de L'Arlot 2009 (樽)
約5000本生産。クロ・デ・ラルロは既に飲み心地がよく、シルキーでミネラリーなスタイルで、焦点がしっかりと定まった、とてもバランスの取れた秀作。熟度も十分に備わっている為、若いうちから楽しめる。
2009年は全体的にアルコール発酵が長かったそうで、8月頃になってようやく糖がアルコールに変換したそうだ。

5.Vosne Romanée 1er Cru Les Suchots 2009 (樽)
約5500本生産。ガスがかすかに残っていて舌先に少しピリピリするが、そんな状態でもこのワインの輝きは少しも変わらない。清らかでいて、とても力強いタッチ。まさにこれがスーショの本当の味わいだとペレグリネッリ氏は語る。スーショは熟すのが早い方なので、早い収穫が毎年必要なのだとか。



6.Romanée St. Vivant 2009 (樽)
約1300本生産。今までで一番いいブドウが取れたのではないかと彼は自信を持って語る。もちろん彼自身、ラルロの全ての収穫に関わったわけではないが、樹齢とヴィンテージの出来が見事にマッチしたのだという。Romanée St. Vivantは買収した当初それほどいい状態の樹ではなかったが、少しずつ植え替えて今日に至る。植え替えたものが30年ほど経ったこともあり、とてもいい状態の葡萄がとれたようだ。



7.Nuits St. Georges Petit Plets 2009 (樽)
約9000本生産。樹齢20年。今のところタニックな印象が強いが、果実味と酸は十分なレベル。ボリュームたっぷりで、通常年の2割増し程度のスケール感。



8.Nuits Saints Georges 1er Cru Clos de Forets St.Georges 2009 (樽)
約30000本生産。昨日、ブレンドしたばかりのものを試飲。フォレは7つのキュヴェをブレンドする。まだ全体的に落ち着いてはいないが、酸はそれほど高くなく強いフルーツ味を感じる。

2008年はマロラクティック醗酵がとてもゆっくりと進んだために出荷が大幅に遅れてしまった。これはコラージュやフィルタを一切しない事も関係している。自然任せで、人の力で早めたりすることはしないからだ。2009年は例年通り5月を予定している。


9.Nuits St.Georges La Gerbotte 2009 (樽)

約6000本生産。あと2週間で瓶詰め予定(11月下旬)。2009年は葡萄が早く熟す年だった為、フレッシュさを出すことが例年に比べ困難だったと語る。暑さのせいで熟度は日々どんどん上がる。それにより酸とフレッシュさは弱まってしまう。単純に早く収穫するだけでは大事な要素を葡萄が得る前に摘み取ってしまうので、タイミングの見極めが難しいそうだ。ただビオディナミになってから白ワインに必要不可欠な洗練されたフレッシュさがより際立つようになったと感じているそうだ。ビオディナミは様々な恩恵をもたらしてくれるのだ。



10.Nuits St.Georges 1er Cru Clos de L'arlot Blanc 2009 (樽)
約5000本生産。ナッツ、ライチ、白い花、菩提樹、ミネラル、ハニーなどの豊かな香り立ち。ジェルボットよりもさらにフレッシュさが際立つ。熟度が高い年の白はどうしても焦点がぼやけてしまうワインが多いが、酸度も程よく見事なバランスを保っている素晴らしいワイン。