[Domaine Mongeard MUGNERET]

ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレ

Chambolle MusignyからVosne Romaneeへ南下し、この日最後の訪問先モンジャール・ミュニュレに到着したのは16:00。昨年の訪問ではドメーヌの都合で来る事ができなかったので、久しぶりの訪問となった。

出迎えてくれたのは、当主ヴァンサン・モンジャール氏と夫人。そして初めて会う30代ぐらいの男性。聞けば、ヴァンサン夫妻の三女ジュスティーヌの夫だそうだ。そしてこの娘婿アレクサンドル・カルミナティ氏こそが息子のいなかったモンジャール家の正式な跡取りとなるらしい。ブルゴーニュでも数本の指に入る偉大なドメーヌを引き継ぐという、とんでもなく大きなものを背負う覚悟をした男なのだ。今後、ヴァンサン氏の下でドメーヌ後継者として、そしてブルゴーニュの今後を牽引していくなどの全てを学ぶのだろう。



いつもどおり、ドメーヌのテイスティングルームで試飲する事となった。ワインはいつも通り、樽から試飲用に瓶に移したものを試飲した。


1.Bourgogne Grand Ordinaire “La Superbe” 2011
1.306ha所有。樹齢30年。除梗100%。フードル熟成。ピノノワールが3割程度、残りはガメイからなるキュヴェ。鮮やかで輝きのあるルージュで、香り立ちもチャーミングで親しみやすい。酸もしっかりとあるが、果実の熟度もあり、バランスが取れている。全体的にはグラン・オルディネールらしい軽く飲みやすいスタイルとなっている。




2.Marsannay “Le Clos du Roy” Blanc 2011
僅か41アールほどの区画からは毎年素晴らしいワインを生み出すことで知られている。甘く熟した香り、円みとしっかりとしたミネラル感は特筆すべきもの。ハニーやヴァニラの要素がワインに品と奥行きを与えていて将来性を感じるが、現時点でも楽しめる。1.級になっても何の疑いもない程の高い品質。

2010年産からクレマン・ド・ブルゴーニュを造る予定だったそうだ。しかしながら、前年から大幅な低収量に終わり、造る事が出来なかった。続く2011年もできず、恐らく2012年産も難しいのではないかと考えているようだ。2013年産にはできればいいがと考えているとの事。実現できればとても楽しみだ。


3.Bourgonge Pinot Noir 2011
2.52ha所有、樹齢28年〜55年。除梗100%。Vosne Romanee 、Flagey Echezeaux,Vougeot村にある区画からのブドウが使われている。香りはこの時点では、やや閉じ気味だが、柔らかく果実味豊かで飲みやすいスタイルに仕上がっている。エレガントさも十分に備わっており、とても丁寧に造られている事がうかがえるワインだ。



4.Bourgogne Haute-Cotes de Nuits Rouge“Les Dames Huguettes” 2011
平均樹齢35年。所有面積2.36ha。132hl程度生産予定。この畑は2008年に購入したもので、Les Dames Huguettesとはリュー・ディ名。その昔、ニュイ・サン・ジョルジュだったが、格下げされてHautes Cotesになり、リュー・ディ名だけ残ったそうだ。濃密で熟した香りがあり、エレガントできれいな果実味が印象的なワイン。毎年、高いクオリティのブドウが採れるそうで、年々良くなってきているとの事。後出のLa Croixと比較するとこちらの方が女性的なニュアンスが強く感じられる。


5.Hautes Cotes Nuits Rouge “LaCroix” 2011
ラ・クロワというリュー・ディを1.1706ha所有。樹齢は約50年。除梗100%。2年樽で熟成。果実味豊かで継ぎ目がなく、バランスが良く、とてもうまくまとまった秀逸なワインに仕上がっている。男性的でストラクチャーがしっかりとしており、前出の女性的なユゲットとは対照的なスタイル。ヴァンサン自身はストラクチャーのしっかりとしたワインを好むようだ。バーベキューでビーフの骨付き肉と合わせるのが特にお気に入りだそうだ。


6.Fixin 2011
1.5789ha所有。北と南に2ヵ所所有している。南の区画は後出のFondemensに隣接している。樹齢40年。除梗100%。新樽比10%。とてもよくできているキュヴェで熟度、酸とのバランスがよく、甘みが強く、しなやか。バラ、ブラックチェリーなどの濃縮した品のある香り。ジュヴレの1級のようなストラクチャーと力強さを備えている。飲み心地が良く、コストパフォーマンスに優れている。ここも毎年安定して高い品質のブドウができるそうだ。




7.Fixin “Les Fondemens”2011
0.42ha所有。樹齢55年。新樽比10%。
このキュヴェは一部除梗していないそうだ。年によって判断されるが、茎まで熟していないと青臭さが出てくるが、十分に熟していると判断され、一部除梗されない房が仕込まれた。除梗しないものが入る事によって、ボルドーのように赤ピーマンなどの要素が加わりさらに複雑な要素が加わるそうだ。前出のヴィラージュよりさらにしっかりとした果実味と酸が際立ちスケール感を感じる。クラシックなスタイル。



8.Savigny les Beaune 1er Cru Les Narbantons 2011
1.3704ha所有。樹齢53年。新樽比30-40%。
甘みが感じやすく、しなやかで大らかな印象。比較的、早い段階から楽しめるだろう。スミレ、フランボワーズなどの豊かな芳香と濃厚で濃密な果実味は多くの人を惹きつけるだろう。



9.Vosne Romanée 2011
2.0196ha所有。樹齢35-72年。新樽比30-40%。
新樽由来のヴァニラ香と果実の甘い香りが高いレベルで混ざり合い共存している。骨格がきちんとあり、品の良いしっかりとした酸も備わっていて、熟成のポテンシャルも十分に感じさせるものとなっている。



10.Chambolle Musigny 2011
30.98a所有。樹齢35年。新樽比25%。
熟度が高く甘くうっとりするような芳香。しなやかで継ぎ目がなく、ひたすらエレガントな印象。柔らかで繊細さもありながら、芯のしっかり通ったワイン。シャンボールの良さをとても上手く引き出している。


11.Gevrey Chambertin 2011
38.30a所有。樹齢40年。新樽比25%。
熟度由来の濃厚な甘みとバランスの取れた酸、そしてエレガントなミネラル感が際立つ。

ドメーヌではエフィヤージュ(葉を落として陽を当てる作業)をあまり行わないそうだ。やるとしても北向きの区画だけ行うが、それはオイディウムなどのカビを防止するためのもので、風通しをよくする為に行われる。葉を取り過ぎると、糖が十分に得られないからエフィヤージュを行う事は、他のドメーヌより少ないのだと言う。




12.Vosne Romanée “Les Mazieres Hautes” 2011
24.97a所有。樹齢72年。新樽比30-40%。
ドメーヌでは基本的に除梗は行われるが、例外的に除梗されないキュヴェもある。このキュヴェは除梗されなかった。除梗は年によって、またキュヴェによってその都度判断されるが、梗が熟しているかどうかで決められる。熟していない梗も一緒に仕込むと、ワインは青臭くなり、凡庸で面白みに欠けるワインとなるが、しっかりと熟した梗を仕込むとボルドーのような赤ピーマン、炭、鉛筆などのニュアンスが加わり、複雑さと奥行きが備わるそうだ。2010年産も除梗しなかったキュヴェも多少あったそうだ。




13.Nuits Saint Georges “Les Plateaux” 2011
69.62a所有。樹齢45年。新樽比30-40%。
このキュヴェも力強い酒質に、しっかりとした熟度と甘みがある。リッチでもあり、エレガント。新樽由来のヴァニリンな要素がうまく果実に溶け込んでいる。




14.Vosne Romanée 1er Cru Les Orveaux 2011
1.0839ha所有。樹齢25-52年。新樽比30-40%。
品のいい香りと、たっぷりとした甘みがあり、柔らかく、しなやかで継ぎ目のないシルキーな果実味。酸も十分にあり、とてもバランスがいい。リッチでゴージャスな一面もある。深みと複雑味は秀逸。



15.Vougeot 1er Cru Les Cras 2011
55.82a所有。樹齢35年。新樽比30-40%。
前出のOrveauxよりは、甘みの度合いは強くはないが、よりエレガントでミネラリーな印象。香り高く、骨格のしっかりとしたワインで熟成が楽しみなワイン。
16.Pernand Vergeless 1er Cru Les Vergeless 2011
75.02a所有。樹齢40年。新樽比40%。
これも他キュヴェ同様に熟度が高く、しなやか。エキス分が幾分力強く感じられ、濃縮感が高いが、酸もしっかりとある為、エレガントでミネラリーさも備わっている。




17.Clos de Vougeot 2011
62.59a所有。樹齢40-68年。新樽比100%。
黒果実の熟した豊かな香りの中に赤ピーマンや炭、磯の香などがほのかに感じられる。除梗していないものが幾らか含まれているようだ。樹齢が古いものはブドウの粒自体が小さい為、全て除梗する事は難しいそうだ。



18.Echexeaux 2011
1.7614ha所有。樹齢25-60年。新樽比50-60%。
この年は100%除梗された。年によっては25%梗を残したりもするようだ。2011年産は華やかで豪華なアロマが特に印象的。濃縮度が高く、リッチで力強いが洗練されたミネラル感にも溢れ、きめ細かいタンニンはしなやかでとても飲み心地がいい。ている。核がしっかりとあり、骨格や肉付きもやはりグランクリュとしての要素をはっきりと感じさせる。


そして、ニュース。ドメーヌのグランクリュの中でも特に人気の高かったEchezeaux Vieille Vigneが2011年産を持ってリリースが一旦終わる事となった。

何故なら、このVielle Vigneの区画をオスピスに寄進したからだ。Echezeaux Vieille Vigneに替わるキュヴェとして、2012年産から新たにEchezeaux “Grand Complication”(エシェゾー グランド・コンプリケーション)というキュヴェがリリースされるそうだ。

グランド・コンプリケーションとは、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、スプリットセコンドクロノグラフなどのいわゆる時計の4大機構である超複雑機構を、複数搭載した腕時計の総称で、複雑な味わいが絡み合うモンジャール・ミュニュレの新たなエシェゾーを表現するのに最適であることから採用された。



マリー・アントワネットが天才時計職人A・ルイ・ブレゲに依頼したのもグランド・コンプリケーションのひとつ。

このワインは現当主ヴァンサンの父が1945年に植樹した区画から造られる。最後のEchezeaux Vieille Vigneと、新しいキュヴェ Echezeaux “Grand Complication”ともにリリースが楽しみだ。
Echezeaux V.Vは、今回未試飲。

モンジャール・ミュニュレはDRCに次ぐ大所有者であり、その面積は2.6haに及ぶ。細かく言えば、その中でも3つのリュー・ディに分類される。アペラシオンでも最下部に位置するレ・トゥルーの区画は肉付きが良く、豊満ではあるが、複雑さやエレガントさに欠けるそうだ。そこでヴァンサンはそのブドウを他の区画のものをブレンドはしないで、輸出先の嗜好に合わせ、この区画からのブドウは全てアメリカ向けのECHEZEAUXとしてリリースしている。アメリカに旅する事があれば、購入してその違いを是非とも試して頂きたい。

そして日本やフランスを含む、その他の国に対してはエシェゾー デュ・デュシュという名のリュー・ディのブドウが使われる。この区画は前出のレ・トゥルーに比べ、緻密な構成を備え、よりエレガントなスタイルのブドウができるそうだ。マーケットを熟知し、理解した上で、的確な判断を下している事が今日の成功につながっているのだろう。



19.Grands Echezeaux 2011
1.3248ha所有。樹齢40-68年。新樽比100%。
この区画は前出のリュー・ディ、レ・トゥルーと同じアペラシオン最下部にある区画でありながら、全く異質のキャラクターのブドウが採れるそうだ。表土はレ・トゥルーが1m以上あるのに対して、Grands Echezeauxの区画の表土は30cm程しかなく、硬く堅牢なスタイルのワインになるそうだ。テイスティングして、まず感じるのは、まだ開いていな果実味の中に、赤ピーマンや磯、炭、鉛筆等の要素が感じ取れる。これも除梗していない分が半分ぐらい含まれているようだ。これがワインの骨格となって、よりスケールを大きなものにしてくれているのだろう。現時点ではやや乾いたタンニンがあり、香りは閉じて硬さがみられるが、備えている要素は豊富で、力強さがうかがえる。2011年を代表する長熟型となるだろう。


20.Richebourg 2011
31.12a所有。樹齢40-60年。新樽比100%。
これも除梗していないブドウの多くが含まれているようだ。煮詰めたような黒系果実のインパクトのある豊かな香り立ち。男性的で力強く、キメ細かいがしっかりとしたタンニンもはっきり主張してくる。ミネラリーでエレガントさも十分に感じられる。ヴァンサン曰く、15年ぐらいは寝かせたいワインとの事。少量しか入荷しない稀少なキュヴェだが、手に入れるチャンスがあるのであれば迷わず購入をおすすめしたい1本。

最後にMongeard Mugneret の2011年産は、とてもいい。2009年のようにニューワールドかと見紛う程、クドいぐらいの高い熟度があるわけでもなく、熟度はあるが適度で、酸が清らかな分、とてもエレガント。2010年ほどグレートではないかもしれないが、比較的早い段階から、楽しむのであれば、2011年の方が多くの飲み手を満足させてくれるに違いない。正直、2010年が飲み頃になるには、15年以上先の話だ。その点、2011年はしっかりとグレートヴィンテージと肩を並べるだけの要素を備えている。エレガントであり、ミネラリーでブルゴーニュのあるべき姿が感じられるのだ。そしてブルゴーニュの王道とも言うべき、味わいを、どのアペラシオンでも的確に表現できるモンジャールは数少ない優良生産者のひとつだ。これほど幅広いアペラシオンのテロワールを理解し、そしてヴィンテージの長所や個性を巧みに引き出してしまう、その凄さこそが、このドメーヌの最大の魅力なのだ。

2011年の試飲を終えた後、ヴァンサンが、おもむろにセラーから持ち出した数年間熟成させたであろうワインのコルクを抜いてくれた。ブラインドであれこれと意見を述べ合ったが、開けてくれたのはRichebourg 1998だった。まだ溌剌としたフレッシュさのある香りを残しながらも、熟成したグランヴァンのピノ特有の枯葉、醤油、ヨード、磯、下草、ややシナモンなどの品のある熟成香がワインに溶け込んでいる。柔らかく複雑味があり、しっとりと包み込んでくるような美しい液体。鼻をいつまでもくすぐり続けるとても長い余韻。ようやく飲み頃になってきたようだ。





この日の訪問は、これで全て終え、Beauneへ戻り、常宿であるHotel Ibis Beaune Centreにチェックインした。ボーヌ市街中心やカルフール等も徒歩圏内。またBeauneで本格的な日本料理が味わえる 媚竈 (Bissohびそう)がすぐ近くにあるのもとても便利。
朝食がとても質素なのとクリーニングサービスがないが、Beauneの他のホテルに比べ、リーズナブルで相対的にはいいホテル。


Hotel Ibis Beaune Centre
7 Rue Henry Dunant21200 BEAUNE
Tel:(+33)3/80227567
http://www.ibis.com/fr/hotel-1363-ibis-beaune-centre/index.shtml