[Domaine Andre BONHOMME]

ドメーヌ・アンドレ・ボノム

出迎えてくれたのは、当主エリック・パルテ氏と息子で醸造責任者であるオレリアン・パルテ氏。
早速、建築家でもあったエリック・パルテが改装したセラーのテイスティングルームで新しいワインの試飲をする事となった。

最初に、2013年に関して話してくれた。2013年は冬が例年に比べ長く、5月の時点では3週間ほど遅れているそうだ。ただ天気がいい日が多いので、よくなるのではないかと予測しているそうだ。

オレリアンの代になってからのドメーヌは以前にも増して意欲的だ。少量ながら新しいキュヴェを造り始め、樹齢100年を超える区画からのブドウだけで造ったVire Clesse Les Pretres de “Quintaine”(ヴィレ・クレッセ レ・プレトル・ド・カンテーヌ)は、とても好評で完売後も問い合わせが多いアイテムのひとつでもある。
そこに新たなキュヴェがひとつ加えられる事となった。前回の訪問時にはさらに別のキュヴェの構想もあったようだが、今回はひとつに絞ったそうだ。まずは泡から試飲を始めた。


1.Cremant de Bourgogne 2009
2009年は彼らにとっても、素晴らしく印象深い年になったそうだ。熟度が高く、ミネラリーで、濃縮感が高いが、産に伸びがあり、きめ細かくクリーミーな泡立ち、そしてエレガントさも備えている見事な造りだ。ドサージュは1.5g~2.0gで、瓶熟は36カ月と毎年少しずつ長くなっているようだ。

他のクレマンと比べても異様に長い3年もの瓶熟はワインをよりクリーミーで複雑味のある味わいに変貌させている。毎年少しずつ長くなる瓶熟の期間はその効果が如実に表れているからこその改良点だ。もはや、下手なシャンパーニュと比べてしまう事さえ、悪い気がしてくる。それほど完成された味わいだ。
1/3を古樽で樽熟、2/3をステンレスタンクで寝かされ、1年後に大タンクでアッサンブラージュ。そこで6か月寝かされ、瓶詰して3年寝かされる。

シャンパーニュ製法で造られる為、とても細やかで深みのあるクリーミーな泡立ちとなる。ドザージュはマコンのヴァンダンジュ・タルディヴが使われるなどこの価格では他を圧倒する力を注いでいる。ちなみにこのヴァンダンジュダルディヴは1976年産が使われており、1本で約30本分のドサージュに使われているそうだ。4年ほど前に10年の沈黙を破り復活したキュヴェだが、ドメーヌの新しい顔になっていて、リリース直後には完売しているそうだ。

クレマンはやはりミレジメで造りたいそうで、その高いクオリティは市場も十分に評価している。シャンパーニュ程の莫大な規模を造ることは到底できないので、少量でも品質だけはシャンパーニュ以上のものを造ってやろうという意気込みが、ひしひしと伝わってくるワインだ。2009年産からKRUGのような特殊な瓶形に戻したそうだが、米国では、売り辛いのか、2008年産のような通常のシャンパンと同じ瓶形で造っているそうだ。ドメーヌのポリシーは決して崩すことはしないが、それぞれの国の文化や嗜好を柔軟に理解し、ニーズに対応できるというのは素晴らしい事だ。



2.Vire Clesse Tradition “Les Pierre Blanche 2011
従来のヴィレ・クレッセ(J.V)の名称変更。石灰の多い土壌でミネラル感に富んだワインが出来る事から新たに”レ・ピエール・ブランシュ”の名を表ラベルに表記することにしたそうだ。100%ステンレスタンクで造られる。これまでJugne Vignes(ジューニュ・ヴィーニュ/若樹)として販売してきたが、既に樹齢は30年を超えている為、V.Vの域に達してきた。造り方等は全く変わっていないが、樹齢が古くなることで、ブドウに深みが年々増しているそうだ。18か月間ステンレスタンク熟成。

2011年はクラシックな年で、力強い花の香りがあり、果実味がきれいで、酸が柔らかくミネラリーな仕上がりとなっている。2010年産よりも酸が穏やかな印象で、バランスの取れたコストパフォーマンスに優れたワイン。3月に瓶詰。コストパフォーマンスに優れており、グランヴァン・ド・フランスで2つメダルを取ったそうだ。


3.Vire Clesse Vieille Vignes 2010
フランスではCuvee Specialとして販売されている。オーク樽とステンレスタンクを併用し24カ月熟成される。2010年も、とても素晴らしい年であり、量が少ないながらも、質の高さは特筆すべきものがある。酸がしっかりしていながら、濃厚で粘性が高く、ねっとりとしており、ムルソーのプルミエ・クリュを思わせる。実際、オレリアンはニュイではなく、ボーヌのスタイルを意識しているようだ。また他の生産者のVireは花の香りが強いが、ストラクチャーが備わっておらず、単に若く飲まれる事が多い。オレリアンのワインはVireのレベルを優に超えているので、ストラクチャーとミネラル、酸、果実味などが高いレベルで渾然一体となっている為、今飲んでも楽しめるが熟成のポテンシャルを備えている、将来がとても楽しみなワインだ。



4.Vire Clesse Hors Classe 2010
樹齢は90年を超える特別な区画で造られる。60%は樽熟(15%新樽、45%古樽)で残りはステンレスタンクが使用される。V.Vよりもさらにミネラリーで濃密か果実味は2010年もしっかりと感じられる。ハニー、レモン、ハーブ、ヴァニラ、シトラス、白桃、白い花などで品よく構成された豊かな香り立ち。酸もしっかりあるが、伸びがあり綺麗。そしてミネラリーで柔らかく濃厚。余韻も長く、洗練されており、長熟型の素晴らしいワイン。


5. Vire Clesse “Les Pretres de “Quintaine” 2010
VireとClesse村の中間にあるQuintaine(カンテーヌ)村キュヴェ名はカンテーヌ村の司祭の意を持つ。区画が礼拝堂に面した日当たりのよい樹齢90年を超える区画にあり、司祭の名の下にあるということから名付けられた。オレリアンが醸造を担当する事になり、テロワールの特異性から新たに別キュヴェとして造られることとなった限定品。年産は2000本程度だが、2010年は極端に収量が減ってしまった。日本へ入荷は前年の1/10以下になる稀少なキュヴェとなった。樽で24ヵ月熟成させ、その内、30%は新樽を使用している。濃厚であり、とてもミネラリー、酸も力強く、上質なムルソープルミエクリュを思わせる。



6. Vire Clesse “LesCoteau de l’Epinet” 2010
新たにリリースする事となったドメーヌ最上位キュヴェ。樹齢は90~95年(1923年頃植樹)僅か10畝のみの樹から生まれる。赤粘土質土壌。600リットルほど生産が可能で、2010年は800本生産された。これは稀少性を表すために表ラベルにも記載されている。重量ボトルに瓶詰めされ、黄色い蝋キャップでシールされている特別なキュヴェだ。前出のプレトル・ド・カンテーヌと同じ醸造法ながら、カンテーヌよりもさらに濃密で粘性のある液体を表現している。パワフルでリッチであり、酸も伸びやかで洗練されている。どこかコルトン・シャルルマーニュを思わせる気品のあるスタイル。樽熟24カ月。新樽比30%。



カンテーヌや通常ラベルとも趣の違うデザインとなる。一目で特別なキュヴェであると分かるキュヴェだ。



7. Vire Clesse “Success D’Automne” 2006
秋の成功と名付けられた特別に良い年だけに作られる稀少なヴァンダンジュ・タルディヴ。樽熟の為、ややオレンジがかったとろみのあるたっぷりとした甘さを備えたワインで良く熟した黄色いフルーツ、蜂蜜、マルメロの香りなどが印象的。フォワグラやデザート、濃厚なチーズやドライイチヂクなどと合わせやすいワイン。


アンドレ・ボノムはオレリアンの代になって確実にそして急激に品質が向上した。先代と比較するとヴィンテージの良し悪しに関わらず、年々、高みへ上って成長しているように感じる。祖父や父から教わった事を理解した上で、決して守りに入らず、新しい試みを常に模索し、それを実践している。闇雲にトライするのではなく、きちんとした理論も伴っている。これは最新の醸造学をしっかりと学び身に着けているからだ。また親交のあるラモネ、コシュデュリ、ボノー・デュ・マルトレイや同世代の若く熱意に満ちた生産者からの刺激も受けているのだろう。とにかくアンドレ・ボノムの未来は明るい。今後さらに飛躍していく事だろう。




ランチはニュイ・サン・ジョルジュにある名店”LA CABOTTE”へ。色とりどりの旬の野菜や様々な食材の本来の味を上品に引出したとてもいいレストラン。見た目も美しく、一皿毎にテーマの異なる絵画のようだ。それに加え、日本食のような素材の旨味を堪能できるモダンで洗練された見事な味付け。小さい店ながら、この味を求めて遠くから来る人が多いのも頷ける。観光客だけでなく、地元の人もよく足を運ぶ本当の意味での名店だ。シェフはワイン生産者と交流が深く、ワインリストも充実しているのも魅力で価格はとても良心的。著名なワイン生産者もよく訪れるようだ。思いがけない大物に出会えるかもしれない。

ワインはPIERRE YVES COLIN-MOREY Chassagne Montrachet 1er Cru La Maltroie 2010を頂いた。ランチなので控えめにハーフサイズ。フレッシュで伸びのある酸とミネラリーでピュアな印象のワイン。









RESTAURANT LA CABOTTE
24,Grande Rue 21700 Nuits-saint-georges
Tel:03 80 61 20 77
http://www.restaurantlacabotte.fr/