[J.Lassalle]

ジュール・ラサール

出迎えてくれたのは当主シャンタル・ラサール女史とその娘アンジェリーヌ。丁度、今日からヴァカンス明けでスタッフがドメーヌに戻ってきたそうで、にわかに活気づいている様子。アンジェリーヌの息子も今日から小学校に入学したそうで、やや慌ただしい中での訪問となった。1942年創業した当時は本当に小さなドメーヌで少しずつ畑を買い足し規模を大きくしていった。1965年になってようやくプレス器を購入する事となり、シャンパーニュを造り始めた。



当初から質の高いシャンパーニュを造ることで評判を呼んだが、ドメーヌが一躍脚光を浴びるようになったのは、現当主シャンタル・ラサールの女性ならではの手腕によるところが大きい。父であるジュール・ラサールの死後1982年に彼女の代になって、その品質は危ぶまれたが、父の代にはなかった女性らしいエレガントでピュアな味わいがドメーヌの発展に大きく寄与したのだ。



シャンタル・ラサール氏



ドメーヌのプレス器は昔ながらのもので、ブドウが一度に4トン入るものだ。それを4時間ぐらいかけてゆっくりとプレスする。4トンのブドウで約25hlの果汁が採れるが一番搾りの20hlがシャンパーニュに使われ、2番目の3hlと残りはアルコール発酵した後、売却される。つまり一番雑味のない純度の高い20hlしか使用されないのだ。ピュアでしっかりとした味わいの原点でもある。現在、より大きなタイプのプレス器を新設中で、今年の収穫からそれが使用されるそうだ。

ドメーヌには現在25の大きなキューヴがあり、そこでデブルバージュ(ぶどう果醪(マスト)の発酵前に、果汁の不純物などを沈殿させる作業)などが行われている。その後、発酵も行われるがキューヴ毎に発酵を自在にコントロールできる。アルコール発酵の後、1か月間マロラクティック発酵が行われる。11月~12月頃にテイスティングを行い、その時にある程度どのワインをブレンドするか決めるそうだ。テイスティングで気に入らないキューヴがあれば、そのままネゴシアンに全て売却される。ラサールでは特にセレクションの基準が厳しいと地元でも言われている。1月にステンレスタンクでアッサンブラージュし、最初のキューヴに寝かせておくそうだ。ステンレスタンクでそのまま寝かせるのは良くない為、キューヴに移される。ドメーヌでは960hlのステンレスタンクが14個あり、今後も徐々に増えていくようだ。


ドメーヌを案内してくれたアンジェリーヌ。

醸造所2階に新設中のプレス器は現在使用されている1965年に購入したドメーヌ最初のプレス器同じメーカーのものが導入される。空気とのコンタクトをなくし、2階から重力でパイプを通って1階のキューヴへ移される。今よりもさらに品質が向上する事だろう。新しいプレス器は一度に10トンのブドウをプレスできるそうだが、ラサールでは多くても6トンまでしか入れないようにするそうだ。古いプレス器は伝統的ながら、とても良くできている素晴らしいものなので、大きいパーセルは新しいプレス器、小さなパーセルは従来のプレス器というように併用するそうだ。

現在は収穫時期を見極めている段階だが、昨年は8月の終わりに収穫を開始したそうだ。11度になるまでシャプタリザシオンするが、去年は暑くシャプタリザシオンしなくとも、10.7度程度の糖度があったそうだ。
今年の収穫量は例年に比べ少ないが、ブドウの質が良く、グレートヴィンテージと謳われた1990、1996年に迫る優良年になるだろうと予想されている。

 収穫はもちろん全て手摘みされ、ノン・ヴィンテージでも最低4年間はストックされる。ミレジメは6~10年ストックされた後、リリースされる。ハーフやマグナムもそれぞれ瓶熟される。また全てのボトルにデゴルジュマンの日付が記載されているなどコアな顧客のニーズにも応えている。ロットによって違いがあるが、ボトルの下部かラベルの裏に記載されているそうだ。

ルミアージュは昔ながらの手作業で行われている。機械に比べると、正確性には欠けるだろうが、トラディショナルな方が味わいに奥深さと人間らしさが出ると考えているからだ。

ドメーヌの所有畑の面積は11.2ha、年産10万本程度と大きすぎず、小さすぎない、細部にまで目が行き届く程よい規模だ。家族の他に常勤のスタッフは6名いる。少数精鋭にすることは同じヴィジョンを共有する上でもとても重要だ。
アンジェリーヌの夫は税務署員でシャンパーニュ造りには直接関わらない。キュヴェを見極めるなどの重要な工程の全てはシャンタルとアンジェリーヌの女性だけで行われるのだ。このドメーヌの持つ女性らしさと芯の通った強さは、女性ならではの感性から生み出されるのだ。
昨年、アンジェリーヌに女の子が生まれた。女性の系譜はこれからも受け継がれていくのだろう。

シャンパーニュでのランチはマダム・シャンタル、アンジェリーヌと共にドメーヌに程近い彼女たちの行きつけのレストランLE GRAND CERFで頂いた。店名は大きな雄鹿の意。外観は質素ながら、内装はとてもエレガントで気品ある造り。美しく洗練されたセンスある調度品に囲まれ、色鮮やかな皿が次々と運ばれる。モダンでスタイリッシュな印象を受ける料理はどれも素晴らしい。ミシュラン一つ星を獲得しているが、ネットレヴューでは、とても高い評価をされている名店。









“LE GRAND CERF”
50,Route Nationale 51 51500 Montchenot
TEL: 03 26 97 60 07
FAX: 03 26 97 64 24
http://www.le-grand-cerf.fr/