[Lamiable]

ラミアブル

9月3日(月) 8:30訪問。出迎えてくれたのは当主Jean-Pierre Lamiable(ジャン・ピエール・ラミアブル)氏の次女Ophelie Lamiable(オフィリー・ラミアブル)。ジャン・ピエール・ラミアブルには二人の娘がおり、長女オレアンは広報担当、次女オフィリーは2003年から醸造を担当している。残念ながらジャン・ピエール・ラミアブル氏はもう一つの仕事でもある医師の仕事で外出しているとの事だった。

ドメーヌの原点は、ラミアブルの隣にある巨大メゾン ローラン・ペリエから畑を譲ってもらった事から始まる。当時は麦を栽培していた方が、儲かったそうだが、せっかくだからとブドウを植えたのが始まり。当時、自社でシャンパーニュは造らず、栽培だけをしており、ブドウはローラン・ペリエに全て売却していたそうだ。

しかし状況は大戦後、一変した。ローラン・ペリエがブドウをこれまでのように買うことができなくなったのだ。やむを得ず、自社でプレスする事を始め、最終的にはシャンパーニュを造る事になったそうだ。だからドメーヌとしての始まりは1950年となる。シャンパーニュを造ったはいいが、ストックするスペースが限られていたため、手の空いた時間にドメーヌの地下の岩盤を少しずつ掘り進めたそうだ。当然、機械などもなく手で掘ったそうだ。年々、スペースがなくなりそうだと、掘り進め、10年かけて僅か3人で今の広大なスペースを作り上げたそうだ。セラーには今も15万本のストックが眠っている。セラーの壁や天井には、今も手で掘った跡がはっきりと見る事が出来る。

シャンパーニュなので、最初はステンレスタンクで発酵させ、その後瓶内で二次醗酵が行われる。ステンレスタンクは、発酵でも使われるが、最後のブレンドにも使われる。そしてドメーヌとして新たな試みは初めてオーク樽を購入したことだ。購入したのはシャンパーニュ地方産の樽で、シャンパーニュには樽屋は一社しかないが、とても上質なものなので購入したのだという。最高級とされるアリエ産オークと非常に似た性質を持っているそうだ。今後は新キュヴェにそれを試みようとしている。

家族と3人の従業員という少数で経営して、年産6万本のシャンパーニュを造り上げる。NVキュヴェは15~24か月、ミレジムキュヴェは3年以上セラーで寝かせてからリリースされる。
通常、ルミアージュ(動瓶)は4時間ごとに動く機械式のジロパレット(動瓶機)が用いられる。これは従来の手作業よりも正確にでき、作業量が大幅に削減できるからだ。
ただクリスマスシーズンに向けての出荷はジロパレットをフル稼働しても追い付かない為、昔ながらのピュピトル(動壜板)で行っているそうだ。ハーフやマグナムなどのサイズは所有しているジロパレットに対応していないのでピュピトルでルミアージュは行われる。

シャンパーニュは3気圧以上の規格があるが、ラミアブルは5~6気圧以上あり、マイナス27度で瓶口を凍らせ、デゴルジュマン(澱の除去)すると5気圧程度になるそうだ。
ラミアブルでは絶対にブショネにならないという特殊コルクを使用している。

1.Extra Brut Grand Cru NV
年産15,000本。40% シャルドネ、60% ピノ・ノワール。ドサージュ(甘味添加)は4.5g/L。すっきりとした酸と果実味。青リンゴの爽やかでフレッシュな香りと、ブリオッシュの香ばしい香りが印象的。これは2009、2010のブレンド。多くの賞を受賞しているキュヴェだが、一番売れるキュヴェではないそうだ。グラス一杯で判断するコンクール受けのいい造りだが、普段飲みにはあまり向かないのかもしれない。



オフィリー・ラミアブル氏


2. Brut Grand Cru NV 
年産25,000~30,000本。40% シャルドネ、60% ピノ・ノワールで前出のExtra Brutと同じブレンドで、ドサージュだけが9g/L~12g/Lと異なる。AMZではこのキュヴェは9~10gでリクエストしている。このキュヴェで色々とテストした結果、日本人の舌に一番マッチすると考えたからだ。だから並行物とは味わいは異なる。黒ブドウであるピノ・ノワールから白いワインを造るので、旨味だけ抽出し、余計な色が出ないようデリケートにそっと潰さなければならない。柔らかく繊細でクリーミーな泡立ちがあり、溌剌とした酸と適度な熟度がとてもバランスよく仕上がっている。



3.Cuvée Pheerie Brut Grand Cru 2006
 年産2,000~2,500本の次女Opheelieの名を冠したスペシャル・キュヴェ。2006年に初めて造った新ブランドでラミアブルのあるトゥール・シュル・マルヌでは珍しいブラン・ド・ブラン。昔からの個人客の要望で試験的に造ってみたら、とても好評だった為、正式に商品化に踏み切ったそうだ。ドサージュは4g/L。すっきりとさわやかな清涼感が際立つ。このキュヴェには特別にクリスタルの粒が王冠(ミュズレ)に埋め込まれている特別なものとなっている。



4.Brut Rosé Grand Cru NV
年産4,300本。40% シャルドネ、60% ピノ・ノワール。赤ワインを加えるロゼ。赤い果実、特にフランボワーズ、カシス、ストロベリーのアロマが心地いい。2012年の収穫からセニエでロゼを造ろうと計画している。新しいキュヴェには木樽を使う予定で、2樽程度を生産する予定。



5. Cuvée les Meslaines Blanc de Noir 2006
100% ピノ・ノワールから造られるブラン・ド・ノワール。所有する畑の中で一番古い区画でローラン・ペリエから買った区画。トゥール・シュル・マルヌは53haほどしかない小さな村でブラン・ド・ノワールとブラン・ド・ブランの両方を生産するのはラミアブルだけ。試飲したキュヴェはデゴルジュマンしたばかりで、冷えていなかったが、しっかりとした濃さのある豊かな味わいを備えている。



5. Ratafia
ラタフィアとは、未発酵ブドウジュースにマール(ブドウの絞りカスで造る蒸留酒)を添加して造られる酒精強化ワイン。語源はラテン語のオレス・ラタ・フィアトからで、「乾杯の音頭」の意。ラミアブルではピノ・ノワール100%で造られ、皮を数時間付け込んだ後、樽熟して造られる。ねっとりとした甘みを持ち、ほのかに熟成感と苦みが感じられ奥深い味わいを備えている。このキュヴェは4年ぐらい前から試験的に造られている。ラミアブルではその他にブジー村からのブドウを使用したコトー・シャンプノワーズなども年によって造っている。

小規模優良レコルタン・マニピュランで構成され、各ドメーヌのスペシャル・キュヴェを統一した瓶とラベルでリリースしているClub Tresor de Champagneのメンバーだったが、2006年ヴィンテージを最後に脱会したそうだ。統一のラベルだと自分たちの個性をあまり表現できないと考えての決断だ。これにより現在販売中のCuvee Special Club 2006が最後となった。ドメーヌではスペシャル・クラブに替わる新ブランドとしてCuvée Héliadesというキュヴェを来春以降にリリースする予定だ。