DOMAINE PAUL PERNOT ポール・ペルノ

amz-dom-report2009-02-03

ピュリニー・モンラッシェのPAUL PERNOTを訪れた。出迎えてくれたのはいつも対応してくれるポール・ペルノJr.氏ではなくポール・ペルノ氏。まだまだ元気で引退するなんてとんでもないといったご様子。息子は今日も畑で仕事しているそうだ。2008年の出来について語ってくれた。

2008年は雨が多く、葡萄がなかなか熟さなかったそうだ。雨のせいで湿度が高まり、カビで苦しめられた生産者が多く、大半が湿気がまだあるうちに収穫をしてしまった。ポール・ペルノでは湿気を飛ばす為に収穫を遅らせ、風が吹くのを待ったそうだ。
ただ闇雲に待っていたのではない。彼の長い経験から、こういった天候が続けば必ず強い風が吹くことを知っていたからだ。彼の予測どおり、風は北から強く吹いた。湿気は風と共に消え去り、そこには凝縮した果実味だけが残った。

収穫したのは10月5日、今から思えばそれが最後の好天だったという最適な日程で収穫することができた。十分に待ったおかげで、シャプタリザシオンの必要もなく、2008年はグレート・ヴィンテージになると喜んだと言う。酸度が高かったので1996年に近いかと思ったが、MLF後は1996年より酸が収まり、とてもリッチなワインになった。

収穫前、天気予報では雨だったが、彼の予想通り好天が続いたそうだ。天気予報を信じて、収穫を早めてしまった生産者はがっかりしたことだろう。これは明らかな失敗だと言わざるを得ない。2008年は収穫時期において生産者の違いがはっきりと現れてしまう年になってしまった。



1.BOURGOGNE BLANC 2007
2007年は難しくない年だった。9月4日に収穫を始め、9月12日に終えたそうだ。ミネラルと酸、果実味とのバランスが非常に高いレベルで調和している。

2.BOURGOGNE BLANC 2008
澱引きしてMLFが終わった段階。

3.PULIGNY MONTRACHET 2008
フレッシュなリンゴ酸が前面に出ているMLF前の段階。

4.MEURSAULT 1er Cru PIECE SOUS LE BOIS 2008
MLF前だが、ピュリニー・モンラッシェに近い味わい。糖度は14.8度あり、シャプタリザシオンの必要がなかった恵まれた年。

5.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru CLOS DE LA GARENNE 2008
MLF中で濁りがまだある段階。バナナのようなトロピカルフルーツのような香りが印象的だった。

6.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru LES FOLATIERE 2008
現時点でガレンヌより凝縮感がある。果実段階で非常に似ていると思っていた1996年は、とてもリッチで良かったが酸がやや硬く、厚みがあり過ぎるためフィネスが弱いと語る。アルコール発酵後、2008年は2006年に近かったが、MLF後に酸が下がったのでバランスがこちらの方が良くなるそうだ。ちなみに2007年のフォラティエールはコストパフォーマンス抜群で一番好きなスタイルらしい。

7.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru LES PUCELLES 2008
乳酸に切り替わる微妙な時期なので一番飲み難い段階。

8.BEINVENUES BÂTARD MONTRACHET 2008
2000本のみ生産。

9.BÂTARD MONTRACHET 2008
1800本生産。酵母臭、カルピス、ヨーグルトなど乳酸の香りの中に樽の香ばしさとミネラルの凝縮感が感じられた。

 ポール・ペルノ氏の手を見てみると右手の第二関節が大きく肥大しているのに気が付いた。失礼を承知で触らせてもらい、写真まで撮らせてもらった。大きくてごつごつしたとても暖かい手。関節が大きくなっているのは一年中畑で鋏を握っているからだよと快活に笑った。
なるほど、鋏を握る形に関節が変わっている。今、畑で働いている息子さんもこの手に変わってきているそうだ。ワイン造りで一番大事なことは畑にあると彼の手は雄弁に語っていた。

2007、2008年は収穫時期によって特に差が出た年だった。またヴィンテージの良し悪しを天候だけでひとくくりで判断し、飲んでもいないワインの評価を書き続ける評論家たちを彼らは何も分かっていないんだよと半ば飽きれたような口調で語ってくれた。

彼が信頼できるという評論家はスティーブン・タンザー氏とアレン・ミドウズ氏だけらしい。他にも優れた評論家はいるかもしれないが、ブルゴーニュにおいては彼らしかいないと言い切る。当然、中立なので彼のワインも偏りなく評価されている。

彼らは中立的な立場で、ドメーヌに赴き、試飲して判断する数少ない評論家のようだ。それ以外の世界的に著名な評論家達は天気だけで判断し、収穫の時期が違うなどの細かな情報は取り入れないまま、机の上だけでワインを評価しているそうだ。全く馬鹿げた話だ。

実際、今回数々の試飲を重ねてみて、世間的な評価と実際の味わいのギャップがあまりにも大きいことに驚いた。

確かに2007、2008年は雨が多かった。ただそれは、生産者の地道な努力と溢れる情熱で簡単に乗り越えられる程度のものだったのだ。ヴィンテージの大まかな評価で判断してしまうのは、ブルゴーニュではとても危険であり、何より難しくなっていると強く感じる。そこには生産者の情熱ひとつで天と地ほどの違いがあるのだから。