BERNARD MOREY & VINCENT MOREY

amz-dom-report2009-02-02

シャサーニュ・モンラッシェのBERNARD MOREYとVINCENT MOREYを訪れた。出迎えてくれたのはベルナール・モレ氏と長男であるヴァンサン・モレ氏。見た目の恰幅の良さもそっくりだ。2007年から二人の息子に畑を分割し、3つの銘柄に増えたこのドメーヌ。醸造所やカーヴこそ共用しているが、栽培方法、収穫時期、醸造に至るまで全て違うそうだ。最初はベルナールとヴァンサンのワインをテイスティングした。


1.BOURGOGNE ROUGE 2007
VINCENT MOREY(以下 V.M)
11月中旬に瓶詰めされたというこのワインは、とても安定している状態にあった。飲み心地がよくタンニンと酸とのバランスがいい。白の造り手のイメージが当然ながら強いが、赤も果実味に富んでいて、とてもいいワインに仕上がっている。

2.MARANGES 1er Cru ROUGE 2007 / V.M
瓶詰めされたばかりの為、やや閉じている印象。若い樹齢の樹で25〜30年から造られる。

3.CHASSAGNE MONTRACHET V.V ROUGE 2007 / V.M
酸とタンニン、果実味がきっちりと互いを尊重して、その良さを上手く引き出している。どれもが突出せず、見事なバランスでとても柔らかくエレガント。清らかで清楚な印象。樹齢は30〜80年と幅広く、各年代の持つ複雑性を見事に表現し、それらがうまく溶け込んでいる。

4.SANTENAY LES ATTES 2007 / V.M
1939年に植えた1haと1982年に植えた0.5haの畑から造られる。サントネは硬い印象のワインが多いがこれはとても柔らかい。ピノ・ノワールの2007年はとても良く熟したそうだ。それはエレガントな質の高い酸を伴っているのでとてもバランスがいい。ピジャージュは少なくしたそうだ。アルコール発酵中にそれをするとタンニンがでてしまうらしく、発酵前にすると余分なタンニンは出ないので、彼は発酵前に行うようにしているとの事。

5.SANTENAY 1er Cru 2007 / V.M
新しく手がける事になった区画。彼の奥さんの実家が所有している畑だそうだ。

6.SANTENAY 1er Cru LES GRAVIERE 2007/ V.M
より柔らかく、果実味が豊か。ヴァンサン・モレは9月9日に収穫を開始した。

7.BOURGOGNE BLANC 2007 / V.M
厚みと酸がきっちり表現されている。グレープフルーツやレモンなどの柑橘系の爽やかな香りとミネラル感のあるふくよかな味わい。

7.BOURGOGNE BLANC 2007 / BERNARD MOREY (以下 B.M)
ヴァンサン・モレよりもややオイリーでナッティな印象。厚みはややこちらの方があるかもしれない。

8.SAINT AUBIN 2007 / B.M
引き締まっていてとてもスタイリッシュな印象。酸の度合いとミネラル感は魚介はもちろん幅広い料理に合わせ易いだろう。

9.CHASSAGNE MONTRACHET V.V 2007 / B.M
ジョルジュ・ルーミエは彼のワインが大好きだそうだ。よく一緒に飲み機会があり、その理由を尋ねたら、あなたみたいに丸いから大好きなんですよ。と答えたそうだ。彼は最近の若い連中は礼儀を知らないんだよと笑っていた。

10.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru BAUDINES 2007 / V.M
それぞれ収穫する人達も違う為、当然 収穫時の指示も違う。当初は同じ造りを試みたそうだが、それぞれの個性をワインに表していくことの必要性を感じたそうだ。

11.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MACHELLES 2007 / B.M
白い花やナッツ、白桃、オーク、煙やトーストの香りが感じられる。

12.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru LES CHENEVOTTES 2007 / B.M
モンラッシェの真向かいにあるという素晴らしい立地。トースト、ナッツ、バターのアロマがとても印象的。ミネラル感がとてもしっかりと感じられる。

13.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MORGEOT 2007 / B.M
オイリーでありナッティな印象。ペトロールや清涼感のあるシャープな柑橘系の香りが特徴的。ペトロールはベルナール・モレには共通して感じられる香りでワインに複雑性と奥行をもたらせている。

14.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MORGEOT 2007 / V.M

5つの区画から造られ、それが大きな範囲に及ぶ為、同じ畑とは言え、様々なタイプの葡萄ができる。石灰質はミネラル感をや粘土質の土壌からは力強さを引き出す事ができる。

15.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru LES EMBRAZÉES 2007 / V.M
赤土で粘土質の土壌。表土には小石が非常に多く、それが日中太陽の熱を蓄える効果があるそうだ。そのおかげで果実は十分に熟す。若いうちから心地良いアロマを十分に放つ。

16.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MALTROIE 2007 / V.M
斜面に位置する畑で太陽の恵みを受け易い畑。火打石や洋ナシのコンポート、オーク、トーストなどの香り。力強い酸と果実味とのバランスはとても良い。

17.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru CAILLERETS 2007/ V.M
酸よりもミネラル感が前面に出ているスタイル。スケール感もあり、ストラクチャーもしっかりとしている。とても土が少ない土壌で僅か30cm掘れば、石灰岩の岩盤があるそうだ。ミネラル感が強く感じられるのはこのおかげ。

18.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru TRUFIÉRRE 2007 / V.M
畑名の由来は文字通り、トリュフが豊富にあったことからだそうだ。その昔、戦争で男手がなくなったことで、木々が生え放題になり、その下に良質のトリュフが取れたそうだ。どちらにせよ昔からこの土地は所有者に富をもたらせてくれることに変わりはない。

19.BÂTARD MONTRACHET 2007 / V.M
全体の15haのうち、モレは1/3も所有している。ミネラル感たっぷりで、酸がきっちりとあるので、焦点がしっかりと定まっている。2006年はリッチでグレートな年に違いないがフィネスはこちらの方が圧倒的にある。

 ベルナール・モレの案内でドメーヌから車でほんの数分の所にある次男のドメーヌ、THOMAS MOREYへ。トマとは初めてで、父親そっくりのヴァンサンとは全く異なる風貌を備え、スマートで芯がしっかりとした凛々しい印象。長男ヴァンサンは父の下で修行していたのに対して、彼はカリフォルニアなど世界で研鑽を積んできたそうで、1年前からはDRCのモンラッシェを担当しているそうだ。厳しいことで知られるオーナーのドヴィレーヌ氏の期待に応える事は大変なことだが、とても勉強になるし、それを自分のドメーヌや家族のドメーヌへフィードバックできることは今後とても価値のある事だと語る。

1.BOURGOGNE ROUGE 2007
赤は8月に瓶詰めしたそうだ。熟度があり、果実味豊かで優しくしなやかな飲み心地。


2.SANTENAY V.V ROUGE 2007
これも8月瓶詰めしたもので、この時期の瓶詰めはフルーツ味をキープしたかったからだと語る。

3.CHASSAGNE MONTRACHET V.V ROUGE 2007
瓶詰めしたばかりで、クローズしているがもう少しすると外交的でやわらかな果実味が全体に惜しげもなく広がってくるそうだ。

4.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru CLOS St. JEAN 2007
BERNARD MOREY名義のラベルだが、今後このメタヤージュしている畑は彼が引き継いでいくそう。ベルナールもヴァンサンも確かにレベルの高いワインを造るが、トマのワインは今後さらに洗練されていくのだろう。彼には天才肌という言葉がぴったり当てはまる。DRCでの経験が、これからもっとはっきりと現れてくると感じさせてくれる造りだ。

5.MARANGES ROUGE 2007
ヴァンサンの同じアペラシオンのものより、酸とタンニンがしっかりしている。

6.SANTENAY GRAND CLOS ROUSSEAU 2007
繊細でしなやかさのある果実味の中に十分な酸を備える。厚みもありバランスも取れている。

7.BEAUNE GRAVES 2007
2001年がファースト・ヴィンテージ。熟すのが一番早いので収穫を一番最初に行うそうだ。

8.BOURGOGNE BLANC 2007
レモン、オレンジ・ピール、酸、ミネラルとACブルゴーニュでこの存在感はとても秀逸。

9.SAINT AUBIN 2007
これもとてもよく出来たワイン。余計なメイクなどなく、素材の良さを十分に生かしている。酸度の度合いが程よく、飲み飽きしないスタイルはとても好感が持てる。

10.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru BAUDINES 2007
ボーディーヌはミネラル分が多く、石灰や鉱物の香りが特徴的の畑だ。ほのかにバターやナッツの香りが加えられており、厚みのあるミネラル感を堪能できる。

11.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru LES EMBRAZÉES 2007
その昔、アンブラゼには樹はなかったそうだ。ベルナール・モレの父、つまりトーマスの祖父が植えたものだ。ヴァンサンの妻であるソフィーの実家はここに4haも所有しており、約90樽分のうち、25樽分をヴァンサン名義でリリースしている。

12.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MORGEOT 2007
ドライフルーツやバニラとアーモンドの抑制された香り。筋肉質で、甘く、アンブラゼと同程度の奥深さを持つ。

13.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru VIDE BOURSE 2007
ライムやメントール、アニスなどクールで清涼感のある香りと鉱物の筋肉質の香りが印象的。柑橘系のジューシーな味わいに胡椒などのスパイスがいいアクセントとなっている。


14.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru TRUFIERRE 2007
酸がきっちりとあり、ミネラル感に富んでいて、丸みを持っている。果実味と酸とのバランスは本当に素晴らしい。


15.BÂTARD MONTRACHET 2007

2007年は3樽、2008年は僅か2樽だけ造られた。
淡い黄金のローブをまとい輝きを放つ吸い込まれるような液体。ピーチ、蜂蜜、花、バターやトーストなどふんだんに盛り込まれた厚みのある香り。リッチで継ぎ目がなく、スケール感のある見事な造りは3部構成の超大作の映画を観ているようだ。このワインはまだ1部が始まったばかりでその全ては明かされていない。

16.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru VIDE BOURSE 2008
まだ濁りがある段階。上質な樽の香りが今は支配的。

17.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru TRUFIERRE 2008
この段階で香りの中でCO2があると良いそうだ。MLFが終わると寒くなった方が、澱が下がり易くなり、酒石も落ちる。MLF後-10度ぐらいまで下がるのが理想的で、2008年は-6度まで下がったそうだ。冬にこれだけ寒くなるとワインが引き締まり、焦点が定まった質の高いワインが出来る。
MLFの活動を妨げるものとされるのはSO2と酸で、旧樽には若干のSO2が残留しているので、MLFは起こりにくく、対して新樽はそれらがないので旧樽よりも早くMLFが始まる。

 現在、プルミエ・クリュの平均相場は1ha €2,000,000程度。1ユーロを120円計算すると2億4千万円、ちなみにグラン・クリュのMONTRACHETの1haは何と€24,000,000で28億8千万円もする。現地の人も天文学的な金額過ぎて、全く現実感がないそうだ。