ロベール・シルグ〜モンジャール・ミュニュレ〜ジョルジュ・リニエ

9:00ヴォーヌ・ロマネ村のDomaine Robert Sirugue(ドメーヌ・ロベール・シルグ)を訪れました。
出迎えてくれたのは、女性の醸造責任者であるマリー・フランス氏。彼女は1979年からドメーヌの運営に携わっているそうです。生産量のうち約30%が輸出され、残りは昔からのつきあいのフランスの顧客の下へ。収穫は45人程度で行われ、10人が選別を行います。そのうち30人以上は毎年手伝いに来てくれている人達なので、細かな指示も十分に理解しているそうです。
まずはドメーヌ地下のカーヴでまだ熟成段階の2006年を樽から試飲させて頂きました。


 


1.Bourgogne Aligote 2006
入荷未定ですが、アリゴテも少しだけ造っているそうです。キレのある酸と果実味はとても心地良いものでした。


2.Bourgogne Rouge 2006
新樽は使わず、4年物の樽を使い熟成させています。当然ながらタンニンの固さはありますが、クラシカルで質感のきめの細かいシルグらしさのある味わいが既に出てきています。



3.Vosne-Romanée 2006
柔らかく、エレガントな香り立ち。クロ・パラントゥに隣接しているレ・バボーを始め、10区画に分かれた畑を所有しているので、それらを上手くブレンド。分かれた区画を全てを合わせると4.96haありますが、2008年から1haが相続の関係で減ってしまうそうです。


4.Vosne-Romanée V.V 2006
前出の区画の一部から生まれるワインで樹齢は60年、0.4ha。よりしっかりとしたタンニンと濃密でしなやかなエキス分を備え、長熟タイプのワインです。


5.Chambolle Musigny Les Mombies 2006
0.27haを所有。赤く熟した果実にオークのニュアンスが溶け込んでいます。バランスがよく洗練された果実味はとてもしなやか。


6.Vosne-Romanée 1er Cru Petit Monts 2006
0.56ha所有。リシュブールの丘にあり、ロマネ・コンティの上部に位置する非常に恵まれた畑。2つ区画に分かれていて、どちらも力強く濃厚なエキス分を持つ葡萄が取れます。植え替えた所もあり、樹齢は古いもので80年、平均樹齢は45年。


7.Grands-Echezeaux 2006
0.12ha所有。樹齢は80年以上の古木から造られる。濃密でタンニンもきめが細かくしっかりと熟しています。僅か2樽しか出来ない希少なワイン。もう少し区画を広げたいんだけど高いから難しいわねとマリー氏。


8.Vosne-Romanée 2007
アルコール発酵が終わり、マロラクティックが始まったばかりを樽から試飲。ヴォーヌ・ロマネのヌーヴォーよと彼女は笑いながらグラスに注いでくれた。「2007年は骨格がしっかりとしたスタイルというより、ソフトでエレガントな年だったわ。4月はとても暑かったので1947年の再来かとも言われたけれど、5月以降の気候の変化でそうはならなかったのよね。でも例年通りに選別をしっかりしたおかげで満足できるワインに仕上がると思うわ。」


9.Vosne-Romanée 1er Cru Petit Monts 2007
醗酵段階なので、まだピリピリとした舌触りだが、シルグらしいクラシカルでエレガントな綺麗な果実味が印象的。



10.Grands-Echezeaux 1993
これまで彼女が手がけてきた中でお気に入りは1990年と1993年だと言う。彼女は「2002年や2005年はどちらも素晴らしい年だけどまだ若いわね。この1993年は2005年の未来の姿だと思うの。しなやかできめの細かい熟したタンニンがあって、複雑な要素が見事に調和して来ているでしょう?まだ熟成のポテンシャルも十分に秘めているのよね。葡萄の出来は天からの授かり物だからこうした素晴らしい年にワイン造りに関わることができてとても幸せだわ。」

試飲を終えた後、彼女は是非うちの畑を見て行ってよと、車で一緒に畑へ向かいました。
ドメーヌのすぐ裏にはヴォーヌ・ロマネの畑が広がります。舗装もされていない勾配のある道を登り、プティ・モンからヴォーヌ・ロマネの畑を見下ろしました。樹々は色付き始め、まさにCote D'or(黄金の丘)に変わりつつあります。車を降り、時折冷たい風が強く吹く中で彼女と共に斜面を下りながら話をしました。

「ここがプティ・モンよ。右下の方にはロマネ・コンティがあるわ。そしてここのすぐ下にはクロ・パラントゥがあるの。立地的にもここは日当たりが良くて雨が降っても斜面のおかげで流れていくから余分な水分は吸収しないのよね。土が少ないのでよりミネラルと力強さを感じることが出来るの。この畑で仕事することができてとてもラッキーだと思うわ。みんなが欲しがる区画だもの。あっ、そうそう、クロ・パラントゥの畑を見てよ。すぐ上にそれを囲むように樹の色が違う区画があるでしょ?信じられないことにあの区画では葡萄が造られていないの。」

確かにはっきりと樹の色が違っていました。その部分だけ葡萄ではなく枯れかけた雑草が生い茂っているようです。

「造る気がないんなら売ったり、貸したりすればいいんだけど、それもしようとしないのよね。ホント、偏屈者よね!?あの場所の価値を全く分かっていないんだもの。この村ではちょっとした問題になってるんだけど、どうしようもないのよね。」

   

プティ・モンの上部には道があり、その隣の石垣の上には石でできた小屋のようなものがあります。何かと訊ねると昔、車などがなかった時代に使っていた休憩所兼避難所のようなものだと教えてくれました。今でも畑仕事の合間に使うこともあるそうです。そこから畑を見下ろす形で彼女と写真を撮りました。




10:30 Domaine Mongerd Mugneret(ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレ)へ到着。
この日宿泊予定のオテル・ド・リシュブールのすぐ裏にあるドメーヌ。このホテルも経営しているそうです。
出迎えてくれたのは当主のヴァンサン・モンジャール氏とその夫人。

よりいいワインを造り、それを世に出せるようドメーヌを法人化し、品質を落とすことなく成功している数少ないドメーヌでもあります。
美術品に囲まれたテイスティングルームで2006年産のワインをボトルで試飲しました。




1.Hautes Côtes de Nuits Rouge ”La Croix” 2006
2006年は2005年より若干生産数は多いが、2007年は選別により2割ほど減ってしまったとヴァンサン氏。十分に熟した果実とミネラル感はとてもバランスよく仕上がっています。



2.FIXIN 2006
ソフトであり、甘く熟したチェリーのような香り。タンニンも程よく熟してしなやかさが出ている。2007年からは新しい畑が加わり、二つのキュヴェがリリース予定。あとマルサネ・ブランも新しく加わるそうです。


3.Vosne-Romanee 2006
しっかりとしまったオークと果実が印象的。クロ・ヴージョに面した区画から造られます。



4.Savigny Les Beaune 1er cru Les Narbantons 2006

5.Nuits St Georges Les Plateaux 2006

6.Pernand Vergelesses 1er Cru Les Vergelesses 2006

7.Vosne Romanée 1er cru Les Orveaux 2006

8.Vosne Romanée 1er cru Petits Monts 2006

9.Echezeaux 2006

10.Clos Vougeot 2006


11.Echezeaux Vieilles Vignes 2006
1929年植樹。2008年からは1945年植樹の畑もV.Vに加える予定。果実の糖度が高く、タンニンも熟しており、酸との均整は絶妙に取れている。


12.Grands Echezeaux 2006
よりタンニンのしっかりとしたスケールの大きいワインに仕上がっている。瓶熟の段階でこの完成度はさすがです。



13.Richebourg 2006
自分のワインを売ってくれる多くの人々とそれを買ってくれる多くの人々の事を常に考えながら仕事に取り組んでいるそうで、その方達の期待を裏切らないことが自分の使命であると語っています。自分のしっかりとした信念のもとで、みんなが求める以上のものを世に出すことへの喜びは何物にも変え難いと彼は語ってくれました。
グランクリュは除梗についても年によってしない場合もあるそうです。



14.Grands Echezeaux 1995
ようやく熟成香が出始めた頃。まだまだしっかりとしたタンニンと洗練された酸があり、ポテンシャルの高さを感じることができる。1985年によく似た年だったようで、十分な酸と果実味が得られた印象深い年だったとヴァンサン氏は語っていました。2007年の酸もこれに共通するとも言っていました。



オーク樽は有名なトロンセの森の隣でヴァンサン氏が森を開拓してそこの樹を使っているそうです。品質的にも同等かそれ以上のものらしいです。トロンセはあまりにも有名になり過ぎていて、その名前だけで高値で売れ、また樽の需要が多すぎて、それに応える為に人工的に乾燥させている所が多いのもトロンセを避ける理由のようです。
ヴァンサン氏はそれでは未来がないと考え、自らが切り拓いた森の上質なオークを厳選し、自然乾燥で18ヶ月間乾燥させてから樽にしているそうです。ここまでこだわって妥協しないで出来るのはブルゴーニュでも数えるほどでしょう。


14:30 Domaine Georges Lignier (ドメーヌ・ジョルジュ・リニエ)へ到着。

ジョルジュ・リニエ氏は既に引退し、2002年から甥のブノワ・ステリー氏が醸造責任者となり、彼に代わってから品質が向上したと言われています。彼の基本的なスタイルは新樽を使わないで古樽でじっくりと18ヶ月から20ヶ月の長期間樽熟させること。
新樽を使うと、要素が強すぎてせっかくのテロワールの持つ個性が損なわれるし、当然長く樽の中で熟成させるのもできないと彼は考えています。
程よく目の詰まった樽を使うことで、ワイン自体が自然な呼吸ができ、主張しすぎないオークのニュアンスが綺麗に現れるそうです。


所有する畑の多くは岩盤があり、土は僅かのようでそれにより根はミネラルを吸い上げ、それを葡萄が蓄え複雑味をもたらします。
実際にその地層を見せてもらったのですが、土の部分はほんの僅かでその下は厚い岩に覆われていました。
ブルゴーニュ全体の地質的な事や醸造技術などワインに関わる全てに対して勤勉な姿勢を感じます。
ジョルジュ・リニエは全部で16haの畑を所有していています。どれもいい区画なので何かのきっかけがあれば確実に火がつくドメーヌだとも感じました。

1.Morey St. Denis 2005
18ヶ月樽熟後、2007年6月瓶詰。十分な熟度と果実味。タンニンもしっかりとしていて理想的なものとなったようです。



2.Morey St. Denis Clos des Ormes 2005
シャンボール・ミュジニーとジュヴレ・シャンベルタンの中間にあるモレ・サン・ドニは互いのよさを兼ね備えているのでとても好きなんだよ。とステリー氏。この辺りから土が少なくなり、岩盤が多くなっているようで、取れる葡萄はドライで甘みも強くないのでエレガントな葡萄が取れるそうです。クロ・ド・ラ・ロシュから道を隔てた下の方にあります。エレガントなフィネスと力強さを兼ね備えたワイン。


3.Clos St. Denis 2005
クロ・ド・ラ・ロシュより上の丘に位置し、他より温度差が激しいが、風通しのよい場所。特級の中でもひと際フィネスを感じる畑。タンニン、アルコール分がしっかりとしており、20年は熟成するだろうとステリー氏。彼が責任者になってから雑味が全くなくなりとても洗練された印象。クロ・サン・ドニは本来閉じる事が少ないそうです。対してクロ・ド・ラ・ロシュはよく閉じたりすることがある畑のようです。


4.Morey St. Denis 2004
7ha所有。樹齢40年。古きよき典型的なブルゴーニュのスタイルが現れています。フランスのジャーナリストで2004年は瓶詰め前から品質は悪いと書いた人もいて、日本でも評価は今でも低くされていますが、今になってそれを改めるジャーナリストが増えてきているようです。


5.Morey St. Denis Clos des Ormes 2004
7月のグリーン・ハーヴェストは葉を切り落とすのではなく、葉の水分を蒸発させ何日か後に自然に落ちる手法を取り入れているそうです。この方が樹の負担が少ないのですが、手間がかかるのでブルゴーニュでも3つのドメーヌでしか取り入れていないそうです。


6.Clos St. Denis 2004
6ha所有。樹齢50〜70年。パワフルさと言うよりもしなやかで深みのあるスムースなスタイル。



7.Morey St. Denis 2003
1.7ha所有。タンニンはしっかりとしているが酸と果実味が十分にあるので今飲んでも楽しめる。その分繊細さには欠ける印象でした。


8.Morey St. Denis Clos des Ormes 2003
2ha所有。樹齢60〜70年。どのワインも低温(5〜8℃)でじっくりと醗酵させ、なるべく手をかけないで自然にまかせる昔ながらの手法。


9.Clos St. Denis 2003
1.6ha所有。二つに分かれた区画。それぞれの樹齢は50年と70年。