ボジョレーから北へ

フランス ブルゴーニュのトップドメーヌなどを廻って来ました。

ジャン・エティエンヌ[ボジョレー]

 10/8(月) 快晴/ 9:30 まず最初に訪れたのは、今年弊社で唯一扱うボジョレー・ヌーヴォーのドメーヌでもあるJEAN ETIENNE (ジャン・エティエンヌ)。出迎えてくれたのは、シェルメット夫妻。早い訪問にもかかわらず、快く迎えてくれました。

まず、ドメーヌの目の前に広がる日当たりの良い斜面に面した畑を、ピエール・マリー・シェルメット氏の説明を聞きながら登りました。吐く息は少しだけ白く、やや肌寒い気候。それでも10月の日本とさほど変わらないようでもあります。
彼はまずボジョレーの現状から話してくれました。

「今のボジョレーはかなりの生産者が販売に苦労している。ヌーヴォーでの売上が大きな割合を占めている中、それに甘んじて、品質重視の造り方を十分にしていない所もあるからだ。ただ優秀な本当に一握りの生産者は慢性的な品不足が続いている。私の所もそうだ。

所有している畑が限られる中、他からの供給が無ければ商品を提供することができない。そこで足りない部分で我々は契約している農家に他が聞いたら呆れるほど、細かく栽培法を指示し、高い品質の葡萄を得ることが出来ている。

ドメーヌでも契約農家でも限りなく自然に近い農法で栽培している。最近ではよく耳にするかもしれないが、リュット・レゾネと呼ばれる農法だ。化学肥料や除草剤は一切使用せずに有機農法で栽培している。

私が考えるには完全なビオディナミでは逆に葡萄を駄目にしてしまう。あの丘を見て欲しい。以前はあそこには葡萄畑が広がっていた。今は何もない。今年は病害などがあったからだ。うちの畑では樹齢が50年〜80年の樹だ。

病害などがあった場合、それにすぐに対応できなければ、せっかくの素晴らしい遺産を全くのゼロにしてしまう。有機農法は自然と付き合うのには最善の策だと私は信じている。」

[試飲アイテム]

1.Beaujolais Blanc 2006
ステンレスタンクで造られた香り立ちの華やかな白。しっかりとしていながら柔らかな酸、ミネラル分を感じ、花の香りや熟した白い果実を思わせる。白はACボジョレーの中では僅か1%程度しかないそうです。

2.Beaujolais Nouveau 2007
まだマロラクティック醗酵中で、もちろん色合いは濁ってはいますが、ボジョレーらしいチャーミングで芳しいスミレの香りを放ちます。あと2日程で醗酵は終わり、1週間ほど経つと色は澄んでくるそうです。どのキュヴェをヌーヴォーにするかは全てテイスティングしてから決めるとの事。彼曰く「私がヌーヴォーに求めるものはソフトでチャーミングなものだ」

3.Beaujolais 2006
熟度が高く、花の香り、特にスミレの香りなどを多く含んでいます。フレッシュでありながらソフトで果実はなめらか。ワイン造りも栽培と同様そのキュヴェにあった特徴を上手く引き出してあげることが大事だと語る彼の言葉にも素直に頷けます。

4.Beaujolais Villages 2006
より甘く熟した香り、深みがあり、余韻もしなやかで比較的長め。粘度が高く、重みもあるので、ヌーヴォーにするには力が強すぎるそうです。花崗岩系の土壌で十分にミネラルなどを根から引き上げているように感じます。

5.Fleurie 2006
去年新たに1.5ha購入。元々は彼がドメーヌを引き継いだ後、フルーリーなどの畑を購入しました。先代所有の畑や、Oingt(ウワン)村のいとこの畑から葡萄を買うこともあるそうです。

6.Brouilly 2006
奥さんの祖母がメタヤージュ(賃貸小作契約)で仕事していた縁で去年、この畑を購入。フルーリーよりタンニンがしっかりとしています。濃さも十分あり、一番南にあるため熟度もしっかりとしています。

7.Moulin a Vent 2006
フルーリーとブルイィの中間ぐらいのタンニン。華やかで、非常にバランスがいい。タンニンもきめ細かいのが特徴。

8.Moulin a Vent 2000
艶めかしく優雅なスタイル。ピノを思わせる果実味。タンニンの角が取れ、継ぎ目のないしなやかさが熟成感とともに現れている。クリュは3年目から格段に美味しくなり、7年目ぐらいから先はさらに楽しみなものとなるので是非熟成したボジョレーも飲んで欲しいとの事。

カーヴ内での試飲の最中、先代であるおじいさんが現れました。92歳の大柄で人懐っこい手の大きなおじいさん。足腰もしっかりとしており、握手したら自分の手など隠れてしまう程。ごつごつとした手ですが優しさが伝わってくる手。長生きの秘訣はボジョレーを毎晩、家族や気の合う仲間と飲む事だそうです。





ボジョレーからマコネー方面へ車で北上し、トゥルンヌのRESTAURANT LE TERMINUSでランチ。






アンドレ・ボノーム[ヴィレ]

14:30 Domaine Andre Bonhomme (ドメーヌ・アンドレ・ボノーム)へ。出迎えてくれたのはアンドレ・ボノーム氏の娘婿であるエリック・ボノーム氏。
日本から持参したワインリストの自分の写真を見て、若いなぁと照れながら呟いていました。やや貫禄が増した頭髪と深く刻まれた皺は生真面目で頑固な職人の風貌です。

まず、2007年の出来について語ってくれました。「今年は生産量は非常に少ない。春先の天候は良かったが、7,8月気温が低かった。それでも9月に暖かい気候が続いたのが良かった。12.5度から13.8度の糖度を得ることができ、2002年のような年になるだろう。

今、市場では2005年産のワインが出ていると思うが、造り方は例年通り、新樽の比率は15%程度にしている。過剰な樽の効果は確かに厚みはもたらすが、繊細さなど多くの要素が失われるからだ。
毎年11〜12万本生産していて、2007年は10万本ぐらいになるだろう。赤は非常に少なく、1500本程度造っているが、要望が多いので2007年からはその品質を落とすことなく若干増やすことができるだろう。」

1957年にドメーヌとして創立、それまでは協同組合に売却していたそうで、高い品質への評価もあり、ドメーヌとしてスタートしました。
今では世界の有名レストランにオンメニューされるなどその名声を欲しい侭にしています。清潔でよく管理された醸造所を見学し、カーヴの中へ。カーヴの入り口には事務所があり、そこには各コンクール金賞の賞状が壁一面にありました。
そこから中に入ると面白そうなアイテムがごろごろと眠っていました。試験的に知り合いのアーティストに星座をモチーフにした絵を手書きで書いてもらったという、マグナムボトル。ヴィンテージもまちまちですが、全てが彼のお気に入りのワイン。
12本限定でその内の数本分けてくれるようです。マグナムは少し古めの'93、'94、'96、'97、'04などを少量オーダー。樽に16年熟成させた珍しい'90のマールもありましたので、これもオーダー。入荷が決まりましたら是非ともご案内させて頂きます。

[試飲アイテム]

1.Viré Clessé 2005
ナチュラルであり、長い熟成によってさらに高みへ到達するであろう素晴らしいポテンシャルを秘めたこのワインは爽やかなリンゴ酸を持ち、その酸は熟度も備え柔らかい。全体的なバランスは非常にいい。葡萄の樹齢は12年〜30年程度ですが、それを疑うほどの深みがあります。自信がないと、JV(ジューニュ・ヴィーニュ)は名乗らないと彼は語っていました。

2.Viré Clessé V.V 2005
30年から60年樹齢の古樹。旧樽を使っているせいかやわらかくエレガントな酸。ふくよかで程よく熟した果実。均整のとれた白ワインのお手本のような仕上がりです。

3.Viré Clessé Cuvée Hors Classe 200411月ご案内のこのドメーヌの最高キュヴェは樹齢は85年。新樽を巧みに使い、凝縮感があり、ミネラル分がふんだんに盛り込まれた果実、スケール感の違いはさすがです。

4.Viré Clessé 2006
7月に樽から移した瓶熟中のものを試飲。出荷は来年。2005年と比べ、若干酸が低いがアルコール分は高い印象。最近はシャプタリザシオンをする必要が無くなったと語る彼は今年初めて人工的に酵母を、実験的に2つのキュヴェに使用したそうです。それが良ければ採用したいし、ダメなら自分で飲むよと語っていました。今の品質に決して奢ることなく常に新しい事にチャレンジする姿勢は見習いたいものです。

5.Mâcon Villages Rouge 2005
1年樽熟で樹齢80年のガメイ100%から造られる。樽熟により、厚みが出てタンニンが丸くなっています。ボジョレーとの大きな違いは良質な樽で長く熟成させることのようです。

6.Mâcon Villages Blanc 1992
2、3年使用した樽を使用。100%樽熟。ローストナッツのような香ばしさがあり、酸、ミネラル、果実が見事に調和し、溶け込んでいます。熟成感と甘みもしっかりとあるので、飲み頃のワインでした。

7.Autumn Success 1999
正確にはフランス名でしたが、忘れてしまいました。秋の成功と名付けられたこのワインの造りはヴァンダンジュ・タルティヴと全く同じですが、法によりその表記は使えないようです。当然、天候に恵まれないと出来ることの無いこのワインは、コンポートや梨、リンゴなどの果実の熟度をたっぷりと備えています。残糖度は18度程度。次のヴィンテージは2006年で、既に予約で一杯のようでした。日本の皆様に是非ともご紹介したいと伝えました。


やや予定を過ぎてしまい、17:00頃この日最後の訪問先であるDomaine Bernard Morey (ドメーヌ・ベルナール・モレ)へ。
出迎えてくれたのは当主のベルナール・モレ氏。1971年に政界入りし、現在シャサーニュ村の村長を務める彼も2008年の春に村長を引退し、政界からも身を引くそうです。
ドメーヌも彼が完全に関わるのは2006年が最後で、2007年より二人の息子に平等に分配するようです。つまり、二つのラベルが新たに出来るのです。とても楽しみです。

今ある醸造所は長男ヴァンサン氏が引き継ぎ、次男はその近くに拠点を置くとの事。もちろん、彼が両方のアドバイザー的な存在です。こうして伝統は新しい世代へと引き継がれて行くのですね。


《試飲アイテム》
1.Bourgogne Blanc 2006
「2006年は1989年と似ている」とモレ氏。「2005年は飲み頃までに時間がかかる。例えるなら1990年だろう」とも。
いずれにせよ、バランスのとれたこのワインは万人が受け入れ易い仕上がりです。特にレストラン様などに是非扱って頂きたいドメーヌだなと感じました。

2.Saint Aubin 1er Cru Charmois 2006

3.Chassagne Montrachet 2006
濃密な樽の香ばしさ、所有するいくつかの区画からなるこのワインの樹齢は息子ヴァンサン氏と同じ37年のものから古いもので60年との事。

4.Chassagne Montrachet 1er Cru Les Embrazées 2006
モレの中では一番大きい畑で彼の親族が一番多く所有しているそうです。赤い土で、粘土が沢山ある土壌。また表土は小石が多いため太陽の熱を蓄えるので、果実は十分に熟してくれるそうです。若いうちから心地良いアロマを放ち、リッチで熟した果実が印象的。

5.Chassagne Montrachet 1er Cru Morgeot 2006
5つの区画に分かれており、それが広範囲に及ぶため、出来る葡萄は様々。石灰質や粘土質の土壌があるのでそれぞれの性格を生かしたワインが出来るのがこの村の特徴。出来る葡萄を大きく分けるとミネラルとパワフル。モレはその両方の葡萄を得る事が奇跡的に出来ているドメーヌです。

6.Chassagne Montrachet 1er Cru Caillerets 2006
酸が一番穏やかでミネラル感が強い。力強さとフィネスを備えています。土が少ない土壌で僅か35?下には石灰岩の岩盤があるそうです。畑の語源は『石』。昔は赤だけの産地で、かなり有名な赤だったそうです。1949年にデ・ラグランジェがシャルドネを植え、スキャンダルにもなったこともあり、白を作り始めた当時、白は赤の半値で取引されていたようです。

7.Puligny Montrachet 1er Cru Les Truffiére 2006
ミネラル感と熟度、しっかりとしたボディと樽のニュアンスがバランスよくまとまっています。
2.5haの区画に4人所有者がおり、現在5社が個々のワインを世に出しています。モレは0.5haを所有しています。

8.Bâtard Montrachet 2006
15haの区画でその内モレは全体の1/3を所有。
恐ろしいほどのミネラル感と力強い酸、熟した果実味がとても印象的。まだ硬さはあるもののグラスの中で変化して、放ち始める香りはとても豪華なのもです。

丘の上にある畑から丘の下に行くにつれて、雨などにより土砂が自然に流れ、上部は土のすぐ下に岩盤があり、ミネラルの強いものとなります。それに対し、下部は溜まった土砂のおかげでミネラルは上部よりは弱まりますが、リッチで厚みのあるスタイルのワインができます。
モルジョの畑ではこの特性を活かして、上部にシャルドネ、下部にピノ・ノワールが植えられています。詳しく傾斜なども知ることで、よりその土地の持つ個性が分かります。





この日は3件のドメーヌをまわり、車でBEAUNEの街へ。泊まったのはMercure Beaune。最近、改装したようで部屋も広く、とても綺麗なホテルです。屋外プールもあり、ボーヌの中心へのアクセスもいいです。



夜はボーヌ中心から少し離れたところにあるアジアン・レストラン”LA PAILLOTE "で頂きました。フランスに来てからワインばかり飲んでいたので、この日はビールだけでしたが、店の在庫が無くなりそうなほど飲みました。みんなさすがに強いです。