[Domaine de la JANASSE]

ドメーヌ・ド・ラ・ジャナス
Domaine de la JANASSEで出迎えてくれたのは、クリストフ・サボンさんと妹のイザベルさん。収穫を2週間前に終え、醸造の最中という貴重な時間を割いて応対してくれた。


2014年は量的にも質的にも、とても満足できるものだったそうだ。14〜14.5%のアルコール度数があるそう。ブドウはさらに選別を厳しくする事で、より洗練されたブドウを仕込むことができたようだ。

超が付くほどのグレートヴィンテージではないかもしれないが、グレートな年のひとつとして数えられることになるだろうと語っていた。

ジャナスでは、幅広い地域に60以上の点在した80haに及ぶ区画を所有している為、ブドウの成熟度を見定めながらの収穫は4週間半に及ぶ。その後、2、3週間はセラーでの大事な仕事となる。今はその最中で、赤はマロラクティック発酵が始まっている頃だそうだ。




1.Côtes du Rhône Blanc 2013

60% Grenache, 残りはClairette,, Bourboulenc,Viognier, Rousanneで造られる秀逸なワイン。 樹齢はGrenache30年, Clairette 30年, Bourboulenc30年,Viognier 15年, Rousanne 15年。

収穫・圧搾は品種毎に分けて、小箱で収穫。空気圧によるプレスされる。醸造・熟成はステンレスタンクで醸造・熟成 澱上で撹拌しながら、約6か月熟成。オークのニュアンスがない分、より爽やかにフレッシュな果実味を楽しめる。サボン氏曰く、オークを使わないのはフレッシュさを表現したいからだそうで、その狙い通り、爽やかで清涼感のある果実味と酸が口いっぱいに広がる。

厚みがあり、まろやかでもあるが、伸びのある酸がいいアクセントとなっている。

クリストフ・サボンは赤白共に素晴らしいワインを造ることで知られているが、それを表す好例が今回も健在だ。彼のその才能の豊かさを十分に感じられる逸品となったのは今年も例外ではない。

2haを植え替えていた分が、今回から加わったので、生産量は少し増えたようだ。


2. Viognier Principauté d’Orange 2013
一部は樽熟で澱に半年触れさせて造られるこのヴィオニエは品種特有の厚みと熟度を十二分に堪能できる。柔らかくストラクチャーのしっかりとしたワインで洋梨、青リンゴ、スイカ、花や白桃、柑橘の香りが印象的。ミネラル感とフレッシュ感溢れるワインとなっている。

世界的にも需要が高いので、それに対応するため数年前に新たに植えたそう。2〜3年後にはさらに収量が増え、その他の区画も2haの植え替えを検討しているそうだ。





ジャナスでは2009年産まではVDP de la Principaute d’Orange Viognierとして、リリースしていたが、INAOによる改正があり、VDP表記からIGP(INDICATION GÉOGRAPHIQUE PROTÉGÉE)に変更となっている。ジャナスではラベル表記を2010年産から変更している。

生産者間でも良く理解していない人が多いようで、消費者に知ってもらうには、まだ時間がかかるだろうとの事。実際、この変更が本当に必要だったのか、疑問に思っている人は多いようだ。


VIN DE PAYSでも、グランクリュ並みに高く評価されているキュヴェもあり、生産者と消費者も決して悪い印象はないと思っていたそうだ。それにその呼び名は長く使っているので、幅広く浸透しているのに、新たにIGPになることで、また一から説明しないとならなくなった事はとても残念だと話していた。


ちなみに今回試飲のなかったTerre de BussiéreはVDP Terre de Bussiére PRINCIPAUTE D’ORANGEの表記だったが、今は
Terre de Bussiére
PRINCIPAUTE D’ORANGE
VIN DE PAYS DE VAUCLUSE
INDICATION GÉOGRAPHIQUE PROTÉGÉE
と、全て表記されている。こうなると益々混乱するし、訳が分からない。2010年からこのように表記されているが、2013年産か、近い将来から表記の一部が変更となるかもしれない。とにかくVIN DE PAYSという表記自体が今後はなくなるのだ。移行への猶予期間のようなものがあるのだろう。



ブルゴーニュでも、近年 Grand OrdinaireがCôteaux Bourguignons(コトー・ブルギニヨン)に名称変更されるなど、生産者もあまり納得していない変更が多々あるようだ。特にこの変更はジュヴレ・シャンベルタンのフィリップ・ロティは浅はかで意味のない改定だと酷評していた。


3.Châteauneuf du Pape Blanc 2013
より濃密で粘性の高さと果実味と可憐な白い花のようなエレガントさが際立つ完成度の高いワイン。イザベルがブドウ畑に囲まれた土地を1ha購入したそうで、将来的に収量はまた増えるだろうとの事。購入前に土壌や過去の病害を詳しく調べたが、何の問題もなく、単純に空いていただけだったそうだ。ブルゴーニュではそんな話はあまり聞かれないが、南仏は大らかなのか稀にあるらしい。


80ha以上も所有しているが、植え替えなどはローテーションで行う必要があるので、どうしても休眠区画が出てくる。生産量を少しでも維持していくためには、いい畑があれば広げていくようにしているようだ。

クリストフは植替えの際は、最低限3〜5年、理想は7年何も植えないで、土地を休ませるそうだ。一度、土地を休ませることで、リフレッシュされ、後々の病害も驚くほどなくなるそうだ。長期的に見れば、長期間休ませるほうが、生産効率が上がるはずなのに、目先の収穫を求めて、植替え後すぐに植えている生産者が今も多いのが現状のようだ。


4.Châteauneuf du Pape Blanc Prestige 2013
メインはルーサンヌでその他にクレレット、グルナッシュブランがブレンドされる。
リッチでとてもゴージャスな味わい。収穫を十分に待ったおかげで、熟度と酸度が最高のバランスで採れたそうだ。粘性が高く、香りもかなり複雑。樽熟されているので、ヴァニリンさとトースティな甘く艶やかな要素も加わっている。

ジャナスではブルゴーニュのようにバトナージュしている。バトナージュとは樽内のワインと滓を撹拌することで、ワインを滓と接触させて熟成させるシュール・リーの応用。滓に含まれるアミノ酸の溶解を促す事で、ワインの風味に厚みが増し、複雑になるそうだ。その効果が十分に感じられる。このキュヴェは毎年1200〜2000本程度しか生産されないキュヴェ名通りの貴重なワイン。日本への入荷は驚くほど少ない。

2011年産はルーサンヌの比率が7割だった。前出のレギュラーのパプ・ブランより厚みがあり、白い花やハーブ、オレンジマーマレード、トリピカルフルーツ、蜂蜜、アプリコット、ローズペタル、ミネラル等の要素を強く感じる。まだ若く閉じているが、高いポテンシャルとスケール感はしっかりと感じる事が出来る。若いうち飲む場合はスパイシーな料理と合わせると、互いを引き立ててくれるとサボン氏はアドバイスしてくれた。年産僅か100ケース程度しか生産できず、日本への入荷は極僅か。


5. IGP Principauté d’Orange Rosé 2013
Syrah, Grenache, Mourvèdreをおおよそ均等にブレンド。2/3は、そのままプレスした果汁で、1/3はセニエしたものを使用して造っている。別キュヴェのコート・デュ・ローヌ ロゼは100%セニエで造られる為、濃縮感のあるロゼに仕上がるが、IGP ロゼはそれより軽めに仕上げてある。

フランスでは5,6年ぐらい前からロゼワインブームがあり、タイプの異なる味わいのロゼをリリースする事はとても重要なのだそうだ。フランスのみならずアメリカ、ドイツ、デンマークなど様々なマーケットで受け入れられていて、リリース直後には完売してしまうほどの人気キュヴェだ。IGPロゼはアペリティフやカジュアルなシーンなどで、とても好まれているそうだ。対してコート・デュ・ローヌ ロゼはアペリティフのみならず、しっかりとした食事と合わせられるように、濃さを持たせた造りをしている。とは言え、このIGPロゼもしっかりと食事に合わせられる。チャーミングでとても分かりやすい果実味とフレッシュ感が魅力だ。その日の気分に合わせて、チョイスするのも面白い。

これまでこのロゼはVin de Pays表記で販売していたが、前述したように実際には2010年産のラベルからVDPではなく、IGPに変更となっている。



6. Côtes du Rhône Rouge 2013

Grenache 40%, Syrah 25%, Carignan 15%, Mourvèdre 15%, Cinsault 5%。
果実味がとてもきれいに現れていて、清らかで洗練された味わいが既に感じられる。2013年もしっかりとしたバランスクリストフ曰く、ACコート・デュ・ローヌの中でもかなり恵まれた区画にある畑だそうで、その恩恵を十分に受けているのがかなり大きいと言う。

グルナッシュの比率が例年なら50%ほどあり、2013年は少し減って40%となっているが、これはクリュール、いわゆる「花ぶるい」(Coulure/受粉・結実が悪く、顆粒が極めて多く落下してしまうこと)が、特にグルナッシュで多くあり、収量が大きく下がった事が要因のようだ。これはこのドメーヌに限らず、2013年産ではブルゴーニュ等の各地でも多かったようだ。




7. Côtes du Rhône Villages
"Terre d'Argile" 2013

各25% Grenache, Syrah, Mourvedre, Carignan
樹齢:Grenache 50年, Syrah 40年
Mourvedre 30年, Carignan 70年
醸造/Concrete
熟成/Oak foodle 80%, Oak barrel 60%(1/3New)
年産40,000本
コラージュ(清澄)前のキュヴェを試飲。コラージュすると円みが出て繊細さがきれいに現れるそうだ。コラージュは卵の白身で行われる。
グルナッシュ、シラーは当然、重要な品種で、核となるものだ。そこに同率で加わるカリニャンやムールヴェドルもとても重要となる。

カリニャンはフレッシュな酸味を表現する重要な品種で70年以上の古木から産出される。ローヌ・ヴィラージュを名乗ってはいるが、ボーカステル所有のシャトーヌフ・デュ・パプの畑のすぐ隣にあり、テロワールは変わらない。味わいもパプと言っても何ら遜色ない見事な出来なのはこの恵まれたテロワールから生まれるのだ。ACローヌで最もコストパフォーマンスが高いと断言できるキュヴェは今年も健在でコラージュ前ながら、十分に洗練されたニュアンスが感じられる。コラージュされることによって、ここからさらに洗練される事を思うと、このキュヴェのポテンシャルの高さは計り知れない。例年同様に粘性の高い甘みと濃縮感を備えながらもしっかりとエレガントさもある。このバランスの良さはジャナスならではのものだ。


8 Châteauneuf du Pape "Tradition" 2013
品種:70% Grenache, 15%Syrah, 残りMourvedre, Cinsault
樹齢:Grenache 40-70年, Syrah 15年
Mourvedre 40年, Cinsault 60年
醸造:Concrete(Grenache,Cinsault) 
Wood(Syrah, Mourvedre)
熟成:Oak foodre 80%,Oak barrel 20%(1/3 New)
年産:18,000-20,000本
ブレンド前の為、グラスの中でいくつかの樽を製品化する樽から同じ分量でブレンドしたものを試飲。タンニンがとても柔らかく、しなやかで飲み心地の良さが際立つ。果実味がきれいに現れている年のようだ。色合いは輝きがあり、とても綺麗だ。クリストフ曰く、1999年や2006年に近いフレッシュな果実味溢れる年になるだろうとの事。

このワインは砂地、小石、赤粘土といった異なる区画からのブドウからのブドウが使用される。グルナッシュはフードル、シラーやムールヴェドルはバリックでそれぞれ分けて1年間熟成させた後、キューヴでブレンドされる。その後、落ち着かせてから瓶詰される。リッチさとエレガントさが見事に同居するキュヴェ。砂地の土壌からはストラクチャーのしっかりとしたブドウが生まれる。

ドメーヌではそれぞれの行程において、気圧計や月の満ち欠け等でその日取りを決めるそうだ。ビオディナミのような手法を取りいれているが、彼らも100%ビオディナミの手法が正しいとは思ってはいないそうだ。自らが試みて、効果があったものを科学的な見地も踏まえ、効率的に取り入れているそうだ。それらを細かくデータを取り、次回に確実に反映できるようにしている。農作物なので、毎年、全く同じ品質のものができる事はないが、少しでもその年の良さを引き出してあげようとする、情熱が感じられる。だからこのドメーヌはどんな年でも高い品質を維持し続けるのだ。


9. Châteauneuf du Pape "Cuvée Chaupin" 2013
品種:100% Grenache
樹齢:80-100年
醸造:Concrete 
熟成:Oak foodre 70%, Oak barrel 30%(1/3 New)
年産:15,000本
樹齢100年を含むグルナッシュ100%で造られる。このワインは2/3はフードル、1/3はドゥミ・ミュイで仕込まれた。ドゥミ・ミュイを使用するのは最近のドメーヌの新たな試みのひとつで、それがとてもいい結果をもたらしているようだ。区画は北向き斜面にある為、ブドウ自体の成熟は他の区画より緩やかになる。そのおかげで他のキュヴェ以上にフィネスに満ちたワインになるそうだ。ワインはコラージュ前で、このキュヴェはまだ堅く閉じていた。

残念ながらこの2013年は、クリュー(花ぶるい)のせいで、収量は大きく落ち込んだ。特にグルナッシュに多くの花ぶるいが発生したそうだ。収量は例年に比べ、-40%とかなりの打撃を受けている。天候の良い南仏では、カビなどの被害が少ないので、これほどの収量減は、雹害以外では最近ではあまり聞かない。ただ通常より実を付けない分、ひとつひとつの房がとても凝縮した果汁を備えたものになったそうだ。洗練された奥行きとスケール感のある味わいのワインになるだろうとの事。


10. Châteauneuf du Pape " Vieille Vignes" 2013
品種:60% Grenache, 15%Syrah , 25%Mourvedre
(例年Gre85%, Sy10%, Mou3%, 他2%)
樹齢:Grenache:80年〜100年、Syrah: 25年
醸造:Concrete 
熟成:Oak foodre 75%, Oak barrel 25%(40% New)
このキュヴェもグルナッシュの花ぶるいによる収量減によって、例年に比べ、グルナッシュの比率が通常80~85%の所、60%に変更された。その分、ムールヴェドルの比率が高くなっている。ムールヴェドルが入ることによって、ワインに深みのある色合いを与え、胡椒やジビエ、トリュフ、黒い果実(カシスやブラックベリー)のアロマ、ガリーグ(地中海沿岸地方の潅木)やローリエなどのニュアンスが加わる。



ワインはコラージュ前で11月~12月の間にコンクリートタンク内でコラージュされる。その後、3カ月ほど落ち着かせてから、瓶詰される。

クリストフ曰く、2013年はカラフェなどに移すと香りも適度に開いて来るので、比較的早くから楽しめるワインになるだろうと予測している。もちろん、熟成しても楽しめるだろうから、世間のニーズにもマッチした年が生まれる事となったようだ。

この日はAvignonのホテル Novotel Avignon Centre hotelにて宿泊。
ここはアヴィニョン中心部に位置する4つ星ホテル。中央駅から200mの場所にあり、アヴィニョン教皇庁アヴィニョン橋等へのアクセスもいい。プール、レストラン、バーも備えており、アヴィニョン演劇祭を楽しむのにも、ドメーヌ訪問の拠点としても最適のホテル。



Novotel Avignon Centre hotel
20 Boulevard Saint-Roch, 84000 Avignon,FRANCE
TEL: :+33 4 32 74 64 64
http://www.novotel.com/fr/hotel-7571-novotel-avignon-centre/index.shtml